「名義人が生まれてから現在までの戸籍謄本を準備してください。」
「亡くなった方のお父様とお母様が成人してから、ご本人が亡くなるまでの謄本をお願いします。」
自分の戸籍を見れば、自分が相続人である事はわかるではないか?と思われる方も多い事と思います。なぜ金融機関は相続手続き等を行うときこのようなお願いをするのでしょうか?
まず戸籍謄本についての用語を確認します。
戸籍とは:国民の身分関係(出生、婚姻、死亡、親族関係等)を登録し、公に証明するための公簿
筆頭者とは:戸籍の最初に記載されている者
本籍(地):戸籍の所在場所
戸籍謄本:公簿に記載されている全ての者の記録。戸籍全部事項証明のこと。
少し言い換えてみましょう。
先ず、筆頭者ですが、その戸籍の代表者と考えてください。戸籍はお父様やお母様等の代表者単位で作られています。
筆頭者が、戸籍を置く場所である本籍地を管理する役所(市区町村)に申請することで戸籍が作られます。
戸籍が作られると役所は戸籍に記載されている方から、出生、婚姻、死亡等家族についての届出を受け付ける毎に戸籍にその事実を記録して行きます。これは本籍地がその役所の管轄外となるまで続きます。
役所は本籍地が自分の管轄内にある間は家族について届けられる度に内容を戸籍に記録しますが、管轄から離れた後や、管轄となる前のことは記録しません。管轄を離れた届出内容は、新たに管轄することとなった役所が、新たに作った戸籍に記録して行きます。
この他にも近年では届出の有無に関わらず、戸籍の様式が変更となったことを理由に本籍地管轄役所内で新しい戸籍が作成されています(戸籍の改製と言います)。改製があったときは、改製日前の届出は改製前の戸籍に、改製日後の届出は改製後の戸籍に記録されるため、一連の戸籍を請求した場合、同じ役所から2つの戸籍謄本が発行されることとなります。
つまり戸籍は
①生まれたときに親が役所に届け出た記録が載っているもの
②結婚など筆頭者の届出により作られたもの
③本籍地を管轄する役所が変わったためつくられたもの
④役所の都合上作られたもの
等があり、各役所は受領した届出を、受領したときに管轄している戸籍にのみ詳細に記録しています。
そのため、相続手続き等を行うにあたって、司法書士や金融機関はその方の一生の間の身分関係を確認し、同意を得るべき権利者から同意を得られているかを確認するため、一連の戸籍を確認する必要があるのです。