退職金の支払い等が就業規則通りに行われないで困っているが、労働裁判までは起こしたくない場合、労働局や社会保険労務士会等のHPを見ると、労使の話し合いによる解決方法として「あっせん」や「調停」という制度が紹介されています。
両者にはどのような違いがあるのかを簡単に説明します。
「あっせん」とは従業員又は事業主が労働局や社会保険労務士会に申し込みを行い、指定日に従業員と事業主が集まって、労働局や社会保険労務士が立会人として間に立って一方の申出内容を聞き取り、それを相手方に伝え、それに対する反論を聞き取り、再び相手方に伝える、という行為を繰り返し、意見の一致を図る手続きです。
1日で終了し、2回程度の意見交換を行い、両者の意見が一致した場合は勿論のこと、一致しない場合も、一致しないという事をもって終了となります。
「あっせん」の際、立会人は話し合いに意見を挟みません。あくまでも当事者間の了承を旨とし、アドバイスを行ったとしても結論を導くことまでは行いません。
無料で行えますが、対象が労働法の違反等、明らかに具体的な法律違反である場合は、制度の目的が「意見の一致を図る」ことである故、解決方法としては馴染まない可能性があります。
「調停」とは従業員または事業主が家庭裁判所に申請を行う事により開始する制度です。
手数料が必要で、賠償金として求める額により金額が変わってきます。又、手数料は申請者負担となります。
調停人は弁護士、社会保険労務士等が行い、指定日に従業員と事業主が家庭裁判所に集まり、調停人が間に立って両者の申出内容を聞き、相手方に伝え、それに対する反論を聞き取り、再び相手方に伝えます。
「あっせん」との大きな相違点は①両者の意見が一致するまで、又は一致しないことが明らかとなるまで、何回でも行われる点です。1日で終わるとは限りません。
また、②対象となる問題が労働法の違反等、具体的な法律違反である場合には、調停人からの意見が入る事も大きな相違点です。「調停」が不成立になった場合、労働裁判に移行することも多い為、非公開とは言うものの、調停人の意見も法律に則ったものとなる傾向が強い様です。
概して労働問題は事業主側の立場が強い為、従業員側に十分な情報がない事から、従業員側が泣き寝入りせざるを得なくなりがちです。
関係する法律が多岐に渡り問題を整理するのに手間がかかる上、相談できる所も限られ、何処から手を付けていいのか分からなくなることも原因として考えられます。
解決に当たっては、先ずはFPや社会保険労務士に相談し、問題の整理から始める事をお勧めします。