定年前の確認事項・雇用保険加入期間

定年後、ハローワークで確認したら、加入していた期間が自分の勤めていた期間と違う!サラリーマンにとって恐ろしい事ですが、それは起こりうることです。

第1講 雇用保険の概略

 雇用保険とは失業他労働者の雇用継続が困難になったとき等、必要な給付が受けられる保険です。サラリーマンなら給与明細を見て頂きますと、保険料は毎月の給与から控除され、労使折半で納付されているはずです。

 雇用保険法では「労働者が雇用される事業」を適用事業とし、「個人経営かつ常時使用する労働者が5人未満かつ農林水産業」を暫定任意適用事業としています。つまり農林水産業以外に従事するサラリーマンなら、適用事業に従事していることになります。

 被保険者は昭和55年当時でも「年収52万円以上で反復して就労し、通常の労働者の3/4以上かつ週22時間以上就労している者」を対象としていますので、通常なら正社員=被保険者となるはずです。

 被保険者である期間は算定基礎期間と言い、雇用保険における様々な給付の要件の1つとされています。

 例えば基本手当(いわゆる失業時の給付)の受給期間です。ハローワークでは算定基礎期間に従って所定給付日数を決め、この所定給付日数によって受給期間を与えています。

 所定給付日数が360日である受給資格者なら1年+60日、330日である受給資格者なら1年+30日の基本手当の受給期間を得られますが、それ以外の所定給付日数である場合は基本手当の受給期間は1年となります。

 転職による自己都合退職や定年を迎えられて退職される方は、被保険者期間が10年未満なら90日、10年以上20年未満なら120日、20年以上なら150日の所定給付日数が与えられますので、基本手当の受給期間は一律1年となります。

 問題は会社都合で離職せざるをなかった方です。会社都合で離職した方が45歳以上60歳未満の場合、算定基礎期間が20年以上であれば330日の所定給付日数が与えられますが、10年以上20年未満であった場合、基本手当の所定給付日数は270日となってしまうのです。

 仮に、被保険者期間が本来20年以上だったのに15年となっていた場合、所定給付期間は本来330日であるのに270日となり、基本手当の受給期間は1年+30日が1年となってしまいます。

 万一基本手当を受給することとなったとき、1年+30日と1年の違いは決して小さなものではないでしょう。

第2講 不一致発生時の対策

 では勤めていた期間と算定基礎期間の不一致はどのように発生するのでしょうか?

 事業主は雇用する労働者が被保険者となった月の翌月10日までに公共職業安定所へ労働者の雇用保険被保険者資格取得届を提出しなければなりません。事業主がこの被保険者資格取得届を行わなかった場合、労働者は雇用保険に未加入とされてしまいます。雇用保険料の徴収時効期間は2年ですから、原則2年を超えて遡って雇用保険料を納めることはできません。

 しかし、そのような場合でも「雇用保険の遡及適用の特例」という制度があります。

①事業主が被保険者資格取得の届出を行わなかったことで雇用保険に未加入とされていた者で

②被保険者資格取得の確認があった日の2年前の日より前の時期に、賃金から雇用保険料を控除されていたことが確認された場合、

この場合に2年を超えて遡って雇用保険を適用する制度が「雇用保険の遡及適用の特例」です。

 この制度が適用されると、厚生労働大臣の事業主に対する勧奨が行われ、事業主は納付していない保険料の納付を申し出ることが可能となります。

 但し、この特例を活用するには、本来支払われるべきであった保険料が事業主によって支払われていなかった事が明らかであることが必要となります。つまりお手元にある過去の給与明細を確認して頂き、賃金から雇用保険料を控除されていた期間がハローワークの記録と一致していない事が明らかであれば、本来の支払がなかった事の証明の1つとなります。

 万が一、雇用保険の加入期間の相違が発見された場合は、先ずは過去の給与明細を確認し、ハローワークや都道府県労働局などに相談されることをお勧めします。

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