定年後の住宅ローンをどうするか

「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」により、定年年齢を65歳未満と定めている事業主は、①定年制の廃止、②65歳までの定年の引き上げ、③65歳までの継続雇用制度の導入、のいずれかの措置を講ずることが必要となりました。現在は多くの企業で継続雇用制度が導入されています。

しかし、継続雇用制度を利用しても、60歳以降の賃金は大幅に下がり、これからの生活をどうしようと考えられるサラリーマンの方が大部分ではないでしょうか。特に60歳時点で住宅ローンを抱えておられる方にとっては頭の痛い事と思います。

一般論では退職金で住宅ローンの残債を一括返済することが推奨されていますが、今後の生活を考えるとそう簡単に決断もできないことと思います。

その様な場合にリバースモーゲージによる借り換えを利用する、という考え方もあります。リバースモーゲージとは自宅を担保に借入を行い、生前は借入元本を返済することなく自宅に住み続け、死後に自宅を売却する等して借入元本を返済する制度です。

例えば住宅金融支援機構が提供している「リ・バース60」の場合、既存の住宅ローンの残高および借換費用等も対象とされ、債務者および連帯債務者が満60歳以上の場合なら、住宅および土地の担保評価額×50%または60%、かつ8000万円以下で、既存の住宅ローン残高以内を融資限度としています。

メリットとしては、①元本返済は死後に行うため、月々の返済が利息部分だけに抑えられる、②自宅に住み続けられ、借り入れた本人の死後も配偶者が連帯債務者である場合、配偶者も引き続き居住できる、③返済方法は死後自宅を売却等するか、生前に現金による繰上返済もできる、等が挙げられます。

注意点としては、①融資限度額が定期的に見直され不動産価額が下落し、借入残高が限度額を上回った場合、差額を返済するか、金利を引き上げられる可能性がある、②借入限度額が担保評価額次第であること、特に債務者および連帯債務者が満50歳以上満60歳未満である場合は担保評価額×30%が上限とされてしまう、③契約に当たって推定相続人全員の合意が必要、等が挙げられます。

但し、不動産価額の下落で死後の売却後、残債が残った場合でも「ノンリコース型」にしておけば相続人に残債の返済義務は残りませんし、年齢による担保評価額の問題も、本人が60歳以上で単独債務者として契約すればクリアできる可能性もあります(その場合契約者の死後、配偶者が契約を引き継ぐ必要があり、再度審査が必要となりますので、配偶者が60歳以上となったら連帯債務者として変更契約が可能となるのか等、事前に金融機関とよく相談しておく必要があります)。

なお、既存の住宅ローンについては直近12か月分の返済が遅滞なく行われていることが条件となることは言うまでもありません。

収入確認書類としては、

給与所得者、年金受給者:源泉徴収票等

個人事業主等:確定申告書等

同族会社役員:法人税の確定申告書等

年金未受給者:ねんきん定期便等

が求められます。

借入限度額の目安となる担保評価額を検討するに当たっては、毎年支払われてる固定資産税納税通知書に記載している固定資産税評価額が参考となります。固定資産税評価額は公示価格の70%で評価されており、公示価格は、一般の土地の取引価格の指標となっているからです。つまり固定資産税評価額÷70%がその土地の公示価格と判断できるのです。

将来の見通しに不安があるという場合、一旦、リバースモーゲージによる借り換えを導入して家計の資金繰りを安定させた後、再雇用や再就職後の環境を判断し、環境に合わせて少しづつ繰上返済を行ってゆくのも1つの方法ではないか、と思います。

定年を迎えられると、周りの環境は一変する一方、住宅ローンの返済は今まで通りにやって来て、どうしていいか分からなくなることもあるかも知れません。でもだからと言って立ち止まってしまわれる事はお勧めできません。まずは社会保険制度、金融制度、金融商品等、あらゆる方法を検討してみてください。ここではリバースモーゲージを紹介しましたが、10人の方がいらっしゃれば10通りの答えがあります。冷静にご自分の状況を整理して、出来る事を一つづつ積み重ねて行かれることをお勧めします。

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