相続手続きで避けるべきこと:共有

両親が亡くなった。兄弟は自分を含めて3人。両親が持っていた実家はどうしよう?

兄弟3人の思い出も多い実家は残しておきたい・・・

そうだ、共有にしよう! これなら持ち分も平等で文句も出ないはずだ!

この様に考えて共有を選択する方は多いようです。

しかし、この様な選択をした場合、最終的に実家は売却されることとなる事が多いようです。

例えば両親の実家を相続したA、B、Cの3兄弟がいたとします。3人は既に自宅を持っています。

Aは実家を残したい、Bは共有持ち分を現金で貰いたい、Cはこだわらない、とします。

結局、3人の意見はまとまらず、最終的には共有とすることになりました。

共有の場合、実家の修理はAさん、Bさん、Cさんが単独で出来ますが、賃貸として利用したり、改装する場合は3人の合意が必要です。つまり実家を活用しようとする時には合意形成が必要となるのです。

実家をどうするか、で合意形成出来なかった3人が、実家活用で合意形成出来るでしょうか?

この様な場合、合意形成が上手く行かず、多くは実家がそのまま空き家となっているケースが多いようです。実家はそのまま老朽化してゆき、家屋として利用するための保守修繕が難しくなって行きます。その内にAが亡くなり、Aの子供のA’が相続人になります。A’はAの実家にはそれ程の思い入れはありません。

ある時A’はB、Cに提案します。「そろそろ皆さんの実家を処分してお金で分けませんか?」

A’にしてみれば、共有するか否かで親ともめたB、Cとの付き合いも薄くなっている上、賃貸も出来ない、修理にはお金も必要な、毎年固定資産税の係るAの実家を維持するメリットはないからです。仮にA’が利用しようとしてもB、Cから共有持分を買い取らない限り実家がA’のものになることはありません。

結果、Aの思いとは裏腹に、実家は処分され、微かに残っていた兄弟親族の縁も実家の処分と共になくなってゆくこととなります。

無論、この様な例ばかりではありませんが、世間ではその様になる例が多い様に見受けられます。つまり、

 実家を残したい➡取り敢えず共有にする➡活用の合意形成が出来ない➡老朽化が進む➡活用不能となる➡相続人が代替わりする➡資金化して分割する

という流れになり易いのです。

共有の問題点は共有者の合意が得られなければ何も進まないことです。

この点に着目して「兎に角、実家を残したい」と考える方が「取り敢えず共有」を選択する事が多い様です。

しかし、「幼い時、自分にべったりだったのに中学生になったら自分を汚れ物扱いする娘さん」や「付き合っていた時は素直だったのに定年前の今は喧嘩ばかりの奥さん」を目にしてきた皆様ならお判りでしょう?

人はどう変わるか分かりません。「取り敢えず共有」にしても、問題を先送りにするだけで、代替わりすればA’にAの思い入れがそのまま引き継がれることは先ずありません。

本来、Aのやるべき事は合意形成だったのです。

共有にはせず、B、Cとの合意形成の中で、

①B、Cに共有持分に見合うお金を払って実家を丸々自分の相続分とする(代償分割と言います)

②Aの残したい部分だけ分筆して貰い(現物分割と言います)、残りはB、Cの共有として(資金化もあるかも知れませんが)B,Cに活用する事を任す

③Aの残したい部分だけ分筆して貰い、残りはB、Cの共有としてB,Cから各持分をAが借りてAが有効に活用する

等を選択する方法もあった筈です。

自分の意に沿わない結果となるかも知れません。しかし、そのまま共有にしても将来の売却が避けられるわけではありません。A’にとって「取り敢えず共有」は厄介ごと以外の何ものでもありません。

先ずは今の相続人の皆様で合意形成を図って下さい。共有は問題の先送りであり、時間が経つ程、売却の可能性・親族間の繋がりが薄くなる可能性が高くなります。

安易に共有にすることなく、今後どの様な将来に向かいたいのかを話し合う機会を作ることこそが将来に何かを残す方法なのですから。

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