相続発生時の手続きについて

相続発生時は、特定の期間までに行わなければならない事が多くタイミングを見計らって行う必要があります。以下では相続発生時から行うべきことを順に追ってゆきます。

1.相続発生後7日以内:死亡届の提出

提出先:死亡者の本籍地・死亡地、または届出人の所在地の市町村役場

提出者:死亡者の親族・同居人など(葬儀社の代行も可)

必要なもの:提出者の印鑑

立ち会った医師が作成する死亡診断書と、遺族が記入した死亡届を提出する。死亡届は時間外受付も可能だが、併せて提出する火葬許可申請書は時間外受付不可の自治体もある。

死亡届と火葬許可申請書を提出すると火葬許可証が公布されるので、火葬場に提出する。

火葬後に火葬済印が押された火葬許可申請書が返却されるが、これが埋葬許可書となる。

なお、死亡届と死亡診断書は後の手続きに必要となるため提出前にコピーを取っておくこと。

2.相続発生後10日以内:受給権者死亡届(報告書)の提出

提出先:手続きする人の住所地の年金事務所、街角の年金相談センター

提出者:遺族

必要なもの:死亡診断書のコピー、死亡者の年金証書、死亡者と提出者の住民票や戸籍謄本等

年金の受給権者死亡届は、国民年金は14日以内、厚生年金は10日以内に提出する。年金機構にマイナンバーを提出していない場合、死後も年金が支給され続けてしまう可能性があるため速やかに手続きを行う。併せて未支給年金・未支払給付金請求書も提出する。

受給資格は死亡日に消滅するが、支給は死亡月分まで行われる。2か月に一度の支払いの為、未払いとなるケースもあり、その場合遺族がその分を請求できる。

3.相続発生後、14日以内:健康保険・介護保険資格喪失届の提出

提出先:市町村役場

提出者:遺族

必要なもの:死亡者の健康保険証、介護保険証、提出者の印鑑

自治体によっては死亡届により手続きが行われる場合もあるが、そうでない場合は遺族が手続きを行う必要がある。健康保険組合や協会けんぽに加入していた場合は事業主が手続きを行う。死亡者を被保険者として被扶養者がいる場合は全員分の健康保険証を事業主に返還した上、被保険者は国民健康保険への加入または他の家族の被扶養者となるなどの手続きが必要となる。

4.相続発生後、14日程度:世帯主変更届の提出・公共料金などの名義変更

世帯主変更届は15歳以上の遺族が2名以上いる場合に住所地の市町村(戸籍課など)へ提出が必要。その他、電気・ガス・水道・NHK受信料・電話料金など生活関連の名義変更の必要有無を確認しておく必要がある。

但し、キャッシュカードの解約や、スマホの解約、SIMカードの解約は慎重に行う必要がある。

デジタルサービスのアカウントは現在一身専属性が強く、遺族と言えど相続等は出来ない。

データのバックアップやメール等は解約すると再生不可となる場合がある。

同様にパソコンやスマホの処分などは一通り相続手続きが落ち着いた後に行う方が無難。

5.相続開始後、3か月以内:遺言書の確認、相続人や相続財産の特定、相続放棄と限定承認

民法上、相続放棄や限定承認は相続開始後3か月以内とされている。遺言書の確認や相続人、相続財産の特定は3か月以内に行わなければならないという決まりはないが、それらが分からないと放棄して良いものかどうかも判断できない事と思う。

先ずは相続開始後2か月程度を目途に遺言書の有無を確認すると共に相続人の特定や相続財産調査等を行う事が必要。

遺言書は故人の本棚や机の引き出しなどを確認すること。なお自筆証書遺言の場合は発見しても決して開封してはいけません。家庭裁判所で「検認」という手続きを行わないと過料が課される場合があります。自筆証書遺言を発見したら先ずは家庭裁判所や行政書士等に相談して下さい。

相続人調査は基本的には被相続人が生まれてから死亡するまでの一連の戸籍謄本が必要であるが、令和6年から最寄りの市町村で全国の戸籍が請求可能となった。一部コンピュータ化されていない謄本は戸籍を有する市町村へ請求する必要があるが、行政書士等に取得を依頼する方法もある。

相続財産調査は預金通帳、保険証書、金融機関からの郵送物等を手掛かりに問い合わせを行う。なお、生命保険については証書などがなくても生命保険協会あて未請求の保険の有無を確認することも可能。また、毎年市町村から来る不動産に係る固定資産税請求書は土地建物の評価を行う上で重要な資料となるので確保しておく方が良い。

6.相続開始後、4か月以内:準確定申告

提出先:死亡者の住所地を管轄する税務署

提出者:相続人

必要なもの:死亡者の源泉徴収票(年金)、相続人全員の押印など

死亡者が自営業だった、年2千万円以上の給与所得があった、公的年金が年400万円以上あった人などが対象となります。なお、故人が給与所得者であった場合は年末調整で事業主が納付手続きを行うため、申告は不要です。

7.相続人発生後、10か月以内:相続税の申告

よく相続税の申告までに全ての相続手続きを終わらせなければならないと考えている方もいらっしゃる様ですが、必ずしもそうではありません。

相続財産額が、基礎控除額(=3,000万円+600万円×法定相続人の人数)以下であるなら申告は不要です。先ずは上記の5に記載した相続人や相続財産の特定をキチンと行う事が争いの少ない相続の第一歩であると考えて下さい。

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