資産運用を始めようとすると、「リスク」、「リスクヘッジ」等という言葉が頻繁に出てきます。
「リスク」というと、一般に「危険度」という形で捉えられがちです。「リスク」という言葉に引っかかって資産運用は専ら定期預金で、という方も多いのではないでしょうか。
確かに世間ではリスクとは「危険度」と解釈されがちですが、投資の世界では「変動幅」と考えられています。
「変動幅」が大きいほど、将来大幅に価格が変化(上昇または下落)する可能性は大きく、「変動幅」が小さいほど、将来価格が変化(上昇または下落)する可能性も小さいと捉えられています。
変動幅が大きいほど、大きな損失を被る可能性がある一方、大きな収益を得られる可能性もあります。他方、現在の相場がこれから上がるのか下がるのかを正確に予測することは不可能ですし、先が見えない中で今の瞬間のみで判断することは環境が激しく変化する中では危険な事です。
そうなると極端な変動幅のマイナスを避け、かつ変動幅のプラスも享受できる戦略、言い換えれば今の瞬間のみに依存しない戦略、変動幅を味方にする戦略を取る必要があります。その戦略こそ「ドルコスト平均法」なのです。
「ドルコスト平均法」というと何か難しい方法かと思われがちですが、内容は単純です。
毎月、一定の金額を一定の商品に投資する、これだけです。
例えば、毎月一定の日に10,000円を一定の投資信託に投資するとします。1月10日の購入価格が1口2,000円なら5口購入できます。2月10日に1口5,000円になっていたら2口購入出来、3月10日に1口10,000円になっていたら1口購入出来ます。3月末には8口が手元に残り、その時の価格が1口4,000円なら、投資金額30,000円に対し、32,000円の購入商品を保有、つまり2,000円の収益が出ている事になります。
ここでドルコスト平均法をとらないで、30,000円を一度に投資していた場合と比較します。
1月10日に投資していたら15口、2月10日に投資していたら6口、3月10日に投資していたら3口を購入出来ました。
3月末の価格は15口なら60,000円、6口なら24,000円、3口なら12,000円になります。
運よく1月10日に投資していれば30,000円の収益を出せますが、それ以外の場合は投資金額はいずれもマイナスとなってしまいます。このマイナスになる可能性こそ投資信託が怖いと言われる原因です。
そしてこのマイナスとなる可能性は上記の例の通り、一度に投資することが原因です。
すなわち時期を分散して投資していれば防止することが出来たリスクであり、ドルコスト平均法による定額投資、今のみに依拠しない戦略こそ、こうしたリスクの防止戦略として有効なのです。
もう一つの特徴は、最初に投資のスタンスを決めれば、あとは概ね考える必要がない点です。
極端に言えば、毎月一定の商品群に一定額を投資するだけで、あとは何もする必要がない、という戦略がドルコスト平均法なのです。
投資信託を行う方の中には、毎月来るレポートを読み込み、毎日の相場の動きに注目し、相場観を養った上で運用を行う方もいます。が、トレーダーならいざ知らず、一般の方がそれだけの労力を割くことは困難です。本来、この労力を省く商品が投資信託、すなわちお金を信託して運用してもらう商品なのです。投資信託を開始する前に、自分が理解できる先へ投資されている信託を選んでいれば、管理料を払っている以上、そう度々相場の推移を確認する必要は高くない筈です。
もちろん、日々のニュースには注目しておく必要はあります。が、日常のニュースを流し見する程度のチェックで資産運用が出来る、という点で投資信託によるドルコスト平均法は無理なく資産運用するための有効な戦略なのです。