60歳で継続雇用を迎える方のチェック事項

現在、定年年齢を65歳未満と定められている会社にお勤めの方は、事業主によって「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」により①定年制の廃止、②65歳までの定年の引き上げ、③65歳までの継続雇用制度の導入、のいずれかの措置が講ぜられている状況にあります。

しかし、多数の従業員を抱える大企業でない限り、60歳を迎えて継続雇用制度を利用する従業員が毎年発生する訳ではありません。発生時には自ずと手続きが手探りで行われる事となりがちです。

ここでは60歳で継続雇用を迎える方のうち、再雇用の場合に絞って最低限ご自分で確認しておくべきことを挙げておきます。

(なお、再雇用とは定年退職で一旦退職扱いとなった後、再度同じ会社に雇用される事です。それに対して勤務延長はそれまでと同じ条件で働き続ける事です。)

継続再雇用が行われた場合、最低限確認しておくべきポイントは

①健康保険手続き、②厚生年金手続き、③雇用保険の高齢者雇用継続給付手続き、④退職所得

の4つです。

1.健康保険手続き

継続再雇用は即ち定年退職後、速やかに再雇用を迎えることです。従って、健康保険はいったん資格喪失し、改めて加入することとなります。具体的には退職に当たって会社から行政機関に一旦「健康保険被保険者資格喪失届」が提出され、同時に健康保険の加入手続きが行われます。

ここで忘れられがちなのが「健康保険被扶養者(異動)届兼健康保険被扶養者確認通知書」の提出です。これは今まで配偶者を健康保険の被扶養者としていた方が再雇用後も引き続き配偶者を被扶養者とするための手続き書類です。事業主に再雇用時の加入手続きと同時に提出して貰わないと一時的に配偶者が健康保険の適用外となってしまいます。

「健康保険被扶養者(異動)届兼健康保険被扶養者確認通知書」には配偶者の所得証明書が必要となりますので事業主あて事前に確認しておいた方が良いでしょう。

なお、問題なく手続きが終わればご自身の分と配偶者の分の新しい健康保険証が再雇用後、事業主経由で受け渡されます。

2.厚生年金手続き

厚生年金保険も健康保険と同様、退職に当たって会社から行政機関に一旦「厚生年金被保険者資格喪失届」が提出され同時に厚生年金の加入手続きが行われます。手続きの確認は再雇用後の最初の給与明細を見て、厚生年金保険料が引き落とされているかを確認する事が確実です(健康保険も健康保険料引落で確認出来ます)。

3.雇用保険の高齢者雇用継続給付手続き

再雇用の場合、健康保険や厚生年金のような手続きは要りません。雇用保険はそのまま継続されます。しかし高齢者雇用継続給付金を受ける場合は、事業主から「雇用保険被保険者60歳到達時賃金月額証明書」と「高年齢雇用継続給付受給資格確認票」をハローワークに提出して貰う必要があります。ハローワーク受付後、控が交付されます。

事業主からハローワークからの控をコピーして貰っておいた方が良いでしょう。

なお、高齢者雇用継続給付金は、2ヶ所から賃金が支払われている場合(出向以外の場合)も適用されます。この場合、雇用保険の被保険者資格がある雇用関係に基づく賃金で給付額が判断されます。

4.退職所得

再雇用の場合、一旦退職金をもらう事となりますが、退職所得の納税手続きは事業主が行う事となります。つまり退職金支払時に源泉徴収が行われますので、事業主から「退職所得の源泉徴収票(受給者交付用)」を貰っておく必要があります。これは年末調整後、確定申告を行う場合に必要となりますので必ず保管しておいて下さい。

皆様様々な会社に勤務し、様々な制度に加入されていると思いますが、以上4点はどの会社でも行われている事項です。

遺漏なくお手続きされ、再スタートをされることを願っております。

資産運用の基本・投資信託の戦略/ドルコスト平均法の考え方

資産運用を始めようとすると、「リスク」、「リスクヘッジ」等という言葉が頻繁に出てきます。

「リスク」というと、一般に「危険度」という形で捉えられがちです。「リスク」という言葉に引っかかって資産運用は専ら定期預金で、という方も多いのではないでしょうか。

確かに世間ではリスクとは「危険度」と解釈されがちですが、投資の世界では「変動幅」と考えられています。

「変動幅」が大きいほど、将来大幅に価格が変化(上昇または下落)する可能性は大きく、「変動幅」が小さいほど、将来価格が変化(上昇または下落)する可能性も小さいと捉えられています。

変動幅が大きいほど、大きな損失を被る可能性がある一方、大きな収益を得られる可能性もあります。他方、現在の相場がこれから上がるのか下がるのかを正確に予測することは不可能ですし、先が見えない中で今の瞬間のみで判断することは環境が激しく変化する中では危険な事です。

そうなると極端な変動幅のマイナスを避け、かつ変動幅のプラスも享受できる戦略、言い換えれば今の瞬間のみに依存しない戦略、変動幅を味方にする戦略を取る必要があります。その戦略こそ「ドルコスト平均法」なのです。

「ドルコスト平均法」というと何か難しい方法かと思われがちですが、内容は単純です。

毎月、一定の金額を一定の商品に投資する、これだけです。

例えば、毎月一定の日に10,000円を一定の投資信託に投資するとします。1月10日の購入価格が1口2,000円なら5口購入できます。2月10日に1口5,000円になっていたら2口購入出来、3月10日に1口10,000円になっていたら1口購入出来ます。3月末には8口が手元に残り、その時の価格が1口4,000円なら、投資金額30,000円に対し、32,000円の購入商品を保有、つまり2,000円の収益が出ている事になります。

ここでドルコスト平均法をとらないで、30,000円を一度に投資していた場合と比較します。

1月10日に投資していたら15口、2月10日に投資していたら6口、3月10日に投資していたら3口を購入出来ました。

3月末の価格は15口なら60,000円、6口なら24,000円、3口なら12,000円になります。

運よく1月10日に投資していれば30,000円の収益を出せますが、それ以外の場合は投資金額はいずれもマイナスとなってしまいます。このマイナスになる可能性こそ投資信託が怖いと言われる原因です。

そしてこのマイナスとなる可能性は上記の例の通り、一度に投資することが原因です。

すなわち時期を分散して投資していれば防止することが出来たリスクであり、ドルコスト平均法による定額投資、今のみに依拠しない戦略こそ、こうしたリスクの防止戦略として有効なのです。

もう一つの特徴は、最初に投資のスタンスを決めれば、あとは概ね考える必要がない点です。

極端に言えば、毎月一定の商品群に一定額を投資するだけで、あとは何もする必要がない、という戦略がドルコスト平均法なのです。

投資信託を行う方の中には、毎月来るレポートを読み込み、毎日の相場の動きに注目し、相場観を養った上で運用を行う方もいます。が、トレーダーならいざ知らず、一般の方がそれだけの労力を割くことは困難です。本来、この労力を省く商品が投資信託、すなわちお金を信託して運用してもらう商品なのです。投資信託を開始する前に、自分が理解できる先へ投資されている信託を選んでいれば、管理料を払っている以上、そう度々相場の推移を確認する必要は高くない筈です。

もちろん、日々のニュースには注目しておく必要はあります。が、日常のニュースを流し見する程度のチェックで資産運用が出来る、という点で投資信託によるドルコスト平均法は無理なく資産運用するための有効な戦略なのです。