NISA(投資信託)をご検討の方へ・安心できる投資信託を考える

第1講 投資信託の必要性

現在、NISAや個人型確定拠出年金の改正等を通し、運用に対する考え方の転換が求められています。

従来の元本確定型の定期預金では1%未満の金利でしか運用できない一方、最近では石油を始め商品の国際価格上昇が著しく、長期的に見ても定期預金のみでの運用では金利が物価上昇に追い付かず、資産価値は目減りしてしまう可能性さえあります。

また、法律の改正により65歳までの雇用継続が維持されているとはいえ現在の日本では大部分の方が60歳以降は給与の減額にさらされており、65歳以降年金支給開始まで如何に手元資金を増やすか、又は減らさずに暮らしてゆくかが課題である方も多いと思います。

こうした将来への対策としては、運用商品の中に物価変動と共に価格の動く商品(株式・債券・金などのモノ・海外通貨など)を導入することが必要となります。少なくとも物価と近い動きで価格が変動して行くなら、資産価値の目減りはカバー出来うるからです。そのため多くの家庭にとって投資信託は避けては通れない資産運用の方法となっているのです。

「預金以外の方法で運用するのはリスクも高いし難しいのでは?」と考える方もいらっしゃいますが、一獲千金を狙うのではなく、物価のトレンドに沿って資産価値を上げたり、配当を受け取ったりする事はそれほど難しい事ではありません。リスク管理、すなわちリスクの内容や大きささえ認識しておけば良いのです。

リスク管理と言うと、相当面倒なものと思われるようですが、銀行預金でも既に皆さんはリスク管理を行っているのです。

例えばどこかの銀行が金利の良い預金キャンペーンを始めたら必ず利用する方や、定期預金残高を1000万円以下にしている方も多いと思います。また、新聞に銀行についての記事が載っていれば必ず目を通す方も多いと思いますし、記事の内容によっては預け替えを行う方もいらっしゃいます。これこそリスク管理なのです。皆さんはこうしたリスク管理が出来るから比較的安心して銀行預金をしているのではないでしょうか。

預け先が安心できる先であり、良い情報も悪い情報も日々目にすることが出来、取引を自分でコントロールできること、この3点のリスク管理が出来るから安心して預金を預けている事と思います。

すなわち同様のリスク管理が出来れば、投資信託もそれほど恐れるものではないのです。

第2講 こうすれば怖くない投資信託

しかし、それでも投資信託は怖いと感じる方が多いです。

預け先は大手銀行で、月々の動きは詳細なレポートで郵送される、預入も解約も何時でも出来る、それでも投資信託をしり込みする方は多いのです。

それは同じ3点でも銀行預金と投資信託では抑え方が違うからです。

銀行預金を例にとり、見てゆきましょう。

先ず、預け先ですが、銀行が貸付や、国債の売買等で皆様の預金を運用していることはご存じかと思いますし、基本的に回収懸念がある先には貸付を行わない事もご存じかと思います。

つまり預け先がどこで運用しているか、又、運用姿勢も分かっているから安心できるのです。

次に情報管理ですが、仮に某銀行で不正融資があったとします。発覚すればその日のニュースで報道されますし、新聞も継続的に掲載を続けるでしょう。そのような報道があると預金者は預け替えも出来ます。

つまり日常的に預け先の情報がある程度把握でき、判断が出来るから安心できるのです。

最後に取引のコントロールですが、定期預金は基本的に何時でも解約できます。解約した所で元本を割り込むことはありません。預けた分が必ず返ってくるから安心なのです。

何処でどのように運用されているか分からない、分からないからニュースでもチェック出来ない、解約しようにも手数料等が取られて元本割れの可能性がある、これでは安心して預けることは出来ません。

ならば運用先が安心できる先と分かっていて、日々その先の情報が分り、かつ元本割れが発生しにくい組み合わせで投資信託を運用すれば良いのです。

第3講 基本となる投資信託のリスクと管理

一言で投資信託と言っても世の中には星の数ほど商品があり、1つの金融機関でも取扱商品の全てを説明できる方はいないと思います。

しかしNISAや個人型確定拠出年金で扱われている投資信託は、突き詰めれば4種類に分類できます。

①国内株式で構成される投資信託、

②外国株式で構成される投資信託、

③国内債券で構成される投資信託、

④外国債券で構成される投資信託、 の4つです。

この基本の4種類の投資信託が持つリスクを理解すれば、NISAや個人型確定拠出年金で扱う投資信託の基本的なリスク管理が可能となります。

ここで大切なポイントです。リスクとは世間では「危険度」と解釈されていますが、投資の世界では「変動幅」と考えられています。

「変動幅」が大きい程、将来大幅に価格が変化(上昇または下落)する可能性は大きく、「変動幅」が小さい程、将来価格が変化(上昇または下落)する可能性は小さいと推定されます。もともと投資信託は複数の商品を1つにまとめて運用すること、例えば株式なら一定の基準を満たす複数の株式を1つに取りまとめて、個別銘柄の値下りを他の銘柄の値上りでカバーすることを想定しています。つまり投資信託は複数の商品をまとめてリスク(変動幅)管理することで、個別銘柄のリスク(変動幅)管理の省略を可能としているのです。

そのため基本的に管理しておくべきリスクは、

①為替リスク、②公社債の信用リスク、③株式の信用リスク、の3つに絞られます。以下では各リスクの内容と留意点を説明します。

①為替リスク

主に外国株式で構成される投資信託や外国債券で構成される投資信託に関わるリスクです。外国株式や外国債券は、自身の業績や条件に関係なくても為替相場が動くとそれによって価格が変動します。円安(外貨高)になれば価格は上がり、円高(外貨安)になれば下ります。

つまり外国株式や外国債券で構成される投資信託を保有するときは、日銀・米国・ユーロ等の金融政策見通しや、国際情勢の見通しに着目し、円が中長期的にどちらの方向に振れてゆくのか注意しておく必要があるのです。

無論、広い意味では全ての商品がお互いに影響を及ぼし合い、国内株式や国内債券も無関係ではいられません。しかし、外国株式や外国債券で構成される投資信託の場合はその影響を端的にかつ直接に受ける点で特に注意が必要です。

②公社債の信用リスク

公社債の信用リスクはその国に投資したとき、元本が返ってくる可能性、利息が付与される可能性と考えてください。これは発行している国の信用力と、取得できる情報の量と質で図ることが出来ます。

まず国の信用力は、その国が発行している通貨が国際決済通貨として運用されているか否かが1つの目安となります。原則的にドル、ユーロ、円、ポンド等、国際決済通貨として通用している通貨の発行国ほど信用力は高いと言えます。

そして、信頼のおける情報が定期的に広く取得できるか、がもう1つの目安です。

一般的に先進国は貿易収支、国民総生産を始め個人消費支出、自動車販売台数、住宅着工指数等、経済について定期的にデータが公開され、ニュースも報道され易く政治・経済・財政の情報が公開されています。信頼できる情報が公開され、その情報が把握しやすい国ほど信用力は高いと言えます。

新興国の場合、国債の利息は高いのですが、国際決済通貨を発行していない、政治・経済・財政の情報を目にする機会が得にくい等の傾向があります。

目論見書を見ると、大抵は運用先の国名は掲載していても個別投資先までは掲載されていません。そのため国としての信用力や取得できる情報量等から考える方がリスクを把握しやすのです。

③株式の信用リスク

株式の信用リスクは株式投資したとき、今後元本が変動する振幅と考えて下さい。株式の場合、価額が下落することがあるのは当然です。問題は下落後に価額が戻るか否かです。但し投資信託の場合、理論上は個別銘柄の変動リスクを複数銘柄への投資でカバーしていますので、公社債と同様、商品群として信用リスクを把握しておけば、ある程度の範囲で変動幅を制御できる可能性が高くなります。

商品群としての銘柄は、概ね先進国銘柄・主要国銘柄・新興国銘柄の3つに分けられ、信用力は一般的に、「先進国>主要国>新興国」の順に、変動幅は「新興国>主要国>先進国」の順に高くなります。

投資先として具体的な銘柄が分れば良いのですが、商品説明書を見ると大抵は「主要国の株式に投資するマザーファンドへの投資」等の表示がされてます。この内容のよく分からない説明が不安を感じる理由の1つだと思います。

この場合、いくつかのキーワードを押えれば、ある程度リスクを判断できます。主なキーワードは「先進国」「主要国」「新興国」「インデックスファンド」「ベンチマーク」「パッシブ運用」「アクティブ運用」等です。「先進国」「主要国」「新興国」は先に記した通りですのでその他について説明します。

●インデックスファンド:

一定の指標(指数)に連動した運用を目指す投資信託。日経平均を 指標としするなら、日経平均に連動した運用をするため日経平均を構成する代表的な銘柄を組入れた運用が行われます。

●ベンチマーク

投資信託を運用するときに目標となる指標です。上記の例でしたら日経平均がベンチマークとなります。

●パッシブ運用

目標とする指標(ベンチマーク)と連動するように動くことを目指す運用スタイルです。インデックスファンドがその代表です。

●アクティブ運用

ファンドマネージャー等が独自の調査や分析に基づいて運用し、目標とする指標(ベンチマーク)を上回る成果を上げることを目指すスタイルです。

要は、信用リスクについては何をベンチマーク(指標)としているかを確認することが重要です。インデックスファンドなら指標とその動きをチェックしておけば投資信託の動向もつかめます。

また、運用スタイルがアクティブ運用なら必ずしも指標の動きと成果が一致しない事を認識しておくべきです。

無論、毎月の運用レポートで株式構成の変化や価格の動き、運用方針の変更有無等を確認しながら運用する方法もあります。しかし、確認に費やす労力を考えた場合、それに見合う成果が挙げられているか否かの方を考える方がいいと思います。

極端に言えば、相応の管理料を受け取り、その代わりに目安となる収益を上げることを目標に管理を任されているのが投資信託なのですから、手数料を支払う側は管理をある程度割り引いて考えても良いと思います。

第4講 まとめ

投資を開始する前に

①為替リスクがあるか、

②投資先の国の信用リスクは高いか、

③投資株式群の指標は何か、

を確認し、

投資を開始した後は

①為替の動き、

②投資先の国の政治・経済等の動き、

③世界的な景気の動き、

もし運用銘柄等が分るなら④発行体・発行業界の動き等、

を確認しておく。

これだけでも相応のパフォーマンスを確保できる可能性は高くなります。

投資である以上、価格変動は避けることが出来ません。要は自分が価格変動の要因を理解できない先へ投資されている信託を選ばないことが大切なのです。

また、価格変動は避けることは出来ませんが、緩和する方法はあります。ドルコスト平均法と呼ばれているのがその基本的な方法です。

ドルコスト平均法については別稿でお伝えします。

介護費用を支払う時の考え方

親が認知症等になってしまい、急に入院費の支払が必要となった場合の支払方法について考えてみます。

子が自分の手元資金から支払う場合もありますし、親の口座から払出を行う場合もあります。支払を受ける側にとっては違いはないのですが、支払う側にとっては後々思わぬ影響が生ずることがあります。

以下で、子が今まで確定申告で親にかかった医療費を医療費控除として申告していた場合(親と生計を一にしていた場合)と、子が親の確定申告に一切関わっていなかった場合(子の確定申告で親の医療費を医療費控除として申告していなかった場合、いわゆる生計を一にしていなかった場合)に分けて考えて行きます。

1.親と生計を一にしていない場合

親と生計を一にしている、とは「常に子が親の生活費や療養費を負担している」場合です。

生計を一にしていないとは「常には子が親の生活費や医療費を負担していない」場合です。

いわば、親が一人暮らしで毎年の確定申告を自分で行い、医療費控除も自分で行っている場合等は生計を一にしていないと言えるでしょう。

このようなケースで子が親の入院費等の立替を行った場合、領収書や記録など、子が立替払いを行ったことを証明できる書類等を残しておくことで、将来相続が発生したときに「負の相続財産」として親の財産から立替分を回収することが出来ます。

無論、親が生きている間は、立替分として清算して頂くことも可能です。

しかし、立替払いを行って、都度清算して貰っていても、親の認知症等が進行し、意思表示も筆記も出来なくなったら預金の払出は出来なくなります。

この場合も、領収書等立替払いを行っている事を証明できる書類のある事が大切になります。金融機関に対して親の預金から清算を求める権利を持っている事を証する書類となるからです。

親の相続が開始するまで立替を継続できるなら相続手続きを待って清算すればいいのですが、立替金額は大抵どんどん増えて行きます。

親の相続開始前に、法定後見人を選任して清算して貰う方法もありますが、後見人を選任した場合、以降は後見人への管理手数料が、原則被相続人である親が亡くなるまで発生し続けます。

立替費用の清算だけなら、領収書等の書類を使って金融機関と払出の相談を行うことをお勧めします。

2.親と生計を一にしている場合

親と生計を一にしている場合は、おそらく毎年の確定申告で親の医療費を医療費控除の対象としていると思います。入院費も同様、医療費控除の対象となります。従って全て子の懐から支払われる費用となりますので、立替という考え方はとられません。

相続が発生した場合も「負の相続財産」とはなりません。遺産分割協議において「寄与分」として、支払った医療費を加味した相続財産を頂きたい旨を他の相続人と交渉する必要があります。

3.親としてとれる対策

高齢となった親が入院した場合、症状が急変し、親族の対応が後手に回ってしまうことが多くあります。とりあえず支払っておく、という事も当然発生します。

人は誰でも齢をとり、形はどうあれ、いつかは状況が自分では儘ならなくなります。

子と生計を一にしていようといまいと、将来かかる医療費程度は贈与税の非課税枠を利用して子に渡しておく方が無難でしょう。

親の名義の預金では意思表示が出来なくなった場合に払出できなくなります。身体が動く間は、あるいは話が出来る間は、等と考えて何ら対策をしないまま認知症に至ってしまう方が多い様ですが、対策をとっていた場合と、とっていなかった場合では子への負担の大きさは雲泥の差となります。

具体的には少しづつでも毎年、子に資産を渡しておくことをお勧めします。現在の税法では受け取る側において年110万円までの贈与は非課税となります。また一定の金額以上の医療費がかかった場合は高額医療費として申請することで、一定額以上の支払額を還付して貰えます。

幾らが適切かは一概に言えませんが、

①合計100万円程度は数年かけて子に渡して管理してもらう

②万一の場合はそのお金から入院費を出してもらい、健康保険制度の高額医療費の申請を行って貰う

③子には必ず領収書を保管しておく様に指示しておく

以上の3点を子と話し合っておくだけでも、万一のときの対策として相応の効果が期待できます。

生命保険などを利用する方法もありますが、いざという時に支払要件に該当しているか否かは誰にも予測出来ません。不確実な将来に対してある程度柔軟な対応が出来るカードを子に持たせておくことが一番必要なのです。