人生で一番大きな買い物はマイホームと言われていますが、生命保険もまた人生で2番目に大きな買い物と言われています。月1万円としても社会人となって1年目から始めれば略40年で480万円、途中の更新や保険増額があれば月平均3万円として1,480万円を支払うこととなります。目的に合った保険を選んでおかないと、場合によっては掛捨てとなり無駄な支出となってしまいます。そのため生命保険加入を考えるときは保険の目的を考える必要があるのです。
保険の目的は4つに分類できます。①世帯主に万一があったときの備え、②病気やけがによる入院や手術への備え、③教育資金の準備、④老後資金の準備、です。どの保険商品がそれに該当するか分類すると以下の通りになります。
①世帯主に万一があったときの備え:終身保険、定期保険、収入保障保険
②病気やけがによる入院や手術への備え:医療保険、がん保険、介護保険、所得補償保険
③教育資金の準備:学資保険
④老後資金の準備:個人年金保険
生命保険を選ぶ場合は先ず保険商品毎の目的を確認し、その目的が自分に合っているかを考える必要があります。
一般に保険加入の優先順位は①世帯主の死亡保障、②夫婦の医療保障、③妻の死亡保障、④こども保険・老後の保険、と言われています。
しかしこれは従来型の「成人前の子供がいる夫婦家庭」をモデルとした考え方で、様々なライフプランを持つ方々がいらっしゃる現在の日本に必ずしも合うものとは言えません。
個人的な見解でありますが、以下の考え方をお勧めします。
1.ベースとなる保険を確保する
:①医療保険(+がん保険)、②所得補償保険
独身の方、共働きの方、別居生活の発生、結婚、離婚など、人は様々な人生を送っています。どんな人生を歩む方も、先ずは個人として自分の生活を維持するための医療保険を確保することをお勧めします。独身者は言うに及ばず、家庭を持っても配偶者が身の回りの世話が出来るとは限りません。共働きの場合、幼い子供がいる場合、他に介護者がいる場合もあります。
社会保険でカバーできる部分も大きいので一般的には1日当り1万円程度の入院保障がある医療保険を確保すれば十分かと思います。もし30歳前に加入されるなら保険料も相当安く、払込完了60歳で終身医療保障となる商品もあります。入院する可能性が一生ついて回るリスクであることを考えれば費用の安いうちに終身医療保険に加入しておくことは必須です。ご家族にがんを患った方がいらっしゃれば、保険会社によっては1口からの加入も出来ますので、がん保険も追加しておくことをお勧めします。
又、余裕があれば所得補償保険で長期療養にも対応できる様に備えておくことをお勧めします。
2.ライフステージ別に保険をカスタマイズする
:③終身保険、④定期保険、⑤個人年金保険、⑥介護保険
ベースとなる医療保険(+がん保険)、所得補償保険を確保したら、次はライフステージ別に保険を準備します。
生きている人には医療保険、所得補償保険で十分ですが、残された方のことを考える場合は終身保険や定期保険が必要となります。つまり結婚したとき、子供がまだ独立していないときです。
一番大きな保障が必要となる期間は結婚して子供が出来、独立するまでの期間でしょう。一般的には25年間くらい、30歳で結婚して子供が出来たとすれば55歳までの期間です。
終身保険は一生涯の死亡保障を確保できる保険です。保険料は高めですが解約時には一部返戻されます。
定期保険は5年、10年等一定期間内の死亡保障を確保出来ます。保険料は安いですが掛捨てです。最近は保障年齢を80歳までとする保険が多い様です。
一生涯の保障を確保できると聞くと、多くの方が終身保険で大きな保障額を選びがちです。
一昔前までは終身保険で将来の貯金をしている、と考える方もいらっしゃいましたが、終身保険料は途中で使えるお金ではないこと、万一途中解約した場合の返戻金は相当減額されること等を考えると、大きな金額を終身保険につぎ込むことは資産形成上リスクにもなりかねません。いつでも自由に資金化出来る預金や投資信託として運用した方がいざという時の自由度は高まります。
ライフプランを確認し、子供も独立した後、どの程度の資産形成が出来るかを考えて、80歳以降に死亡したときに残す必要がある金額を終身保険、現在から80歳になるまでの期間は5年又は10年の定期保険で対応し、浮いたお金をNISA等で運用する方が遥かに費用が安く済みます。
子供が生まれたから学資保険、と考える方もいらっしゃいますが、運用効率やいざという時の自由度から考えると、むしろ定期保険とNISAを組み合わせることを考えた方が良いのではないでしょうか。
独身の方の中には介護保険を考える方もいらっしゃいますが、一般的には要介護状態になってからでないと利用できない事も考えておくべきです。要介護というと所謂認知症がある程度発症した状況です。介護保険も保険である以上、申出がないと保険金支払いが開始されない事を考えると、その時誰が自分の代りに申出を行ってくれるのか、考えておかないと死に金となります。子供のいらっしゃらないご夫婦も同様です。
老後のことを考える場合は介護保険より個人年金保険を視野に入れておくことをお勧めします。やはり若い時から加入された方が保険料が安いですし、収入が減って来た頃に年金受給開始までの補填として利用出来れば、将来の不安要素を減少させる効果があります。
以上、保険についての私見を述べさせていただきました。保険についてインターネットやCMで多くの広告が流れていますが、結局は自分の人生は自分一人のものです。保険会社のテンプレートに乗せられることなく、自分の人生の中での各々の保険の役割を考えて契約させることをお勧めします。