相続手続きでさけるべきこと:共有2

相続手続きで共有を避けるべき理由は既に記載させて頂きましたが、実家などを残すため「取り敢えず共有」を考えていらっしゃる方に重ねてお伝えします。

「取り敢えず共有」はある意味で極めて危険な行為です。「取り敢えず共有」を選択する方には「兎に角、実家を残したい」と考える方が多いと思いますが、共有にしても処分が避けられるわけではありません。それどころか、予期せぬ危険に遭遇する可能性もあります。

「共有持ち分」は持ち分を持つ方が自由に処分できます。

担保として提供することもできます。持ち分に対して抵当権などを設定することも可能なのです。

売却もできます。ネットなどで検索していただければ、「持ち分を買います」という業者はすぐ出てくるでしょう。

問題なのは敢えて持ち分を買うという方々がどの様な方々なのか、です。

特殊な例ではありますが、過去にこのような事案がありました。

数人で共有としていた私道の持ち分の一部が、反社会的勢力に売却されたのです。

反社会的勢力の目的は、私道を通らねば公道に出られない、大地主が住む広大な囲繞地を安く購入することでした。反社会的勢力が大地主にどの様な行為を行ったか、はここでは触れませんが、最後にその大地主は相当の金額を払って、私道の持ち分を反社会的勢力から買い戻して事なきを得たそうです。

無論、これは極めて特殊な例ですが、敢えて「持ち分」を購入しようという方はそれなりの目的を持っている可能性がありますし、「持ち分」をどうしても資金化しようとする方には売却という手段が残されている、ということを頭に入れておく必要があります。

複数の相続人がいる場合には、先ずは相続人同士で合意形成することを最優先し、「取り敢えず共有」は行わないようにすることを強くお勧めします。

相続手続きで避けるべきこと:共有

両親が亡くなった。兄弟は自分を含めて3人。両親が持っていた実家はどうしよう?

兄弟3人の思い出も多い実家は残しておきたい・・・

そうだ、共有にしよう! これなら持ち分も平等で文句も出ないはずだ!

この様に考えて共有を選択する方は多いようです。

しかし、この様な選択をした場合、最終的に実家は売却されることとなる事が多いようです。

例えば両親の実家を相続したA、B、Cの3兄弟がいたとします。3人は既に自宅を持っています。

Aは実家を残したい、Bは共有持ち分を現金で貰いたい、Cはこだわらない、とします。

結局、3人の意見はまとまらず、最終的には共有とすることになりました。

共有の場合、実家の修理はAさん、Bさん、Cさんが単独で出来ますが、賃貸として利用したり、改装する場合は3人の合意が必要です。つまり実家を活用しようとする時には合意形成が必要となるのです。

実家をどうするか、で合意形成出来なかった3人が、実家活用で合意形成出来るでしょうか?

この様な場合、合意形成が上手く行かず、多くは実家がそのまま空き家となっているケースが多いようです。実家はそのまま老朽化してゆき、家屋として利用するための保守修繕が難しくなって行きます。その内にAが亡くなり、Aの子供のA’が相続人になります。A’はAの実家にはそれ程の思い入れはありません。

ある時A’はB、Cに提案します。「そろそろ皆さんの実家を処分してお金で分けませんか?」

A’にしてみれば、共有するか否かで親ともめたB、Cとの付き合いも薄くなっている上、賃貸も出来ない、修理にはお金も必要な、毎年固定資産税の係るAの実家を維持するメリットはないからです。仮にA’が利用しようとしてもB、Cから共有持分を買い取らない限り実家がA’のものになることはありません。

結果、Aの思いとは裏腹に、実家は処分され、微かに残っていた兄弟親族の縁も実家の処分と共になくなってゆくこととなります。

無論、この様な例ばかりではありませんが、世間ではその様になる例が多い様に見受けられます。つまり、

 実家を残したい➡取り敢えず共有にする➡活用の合意形成が出来ない➡老朽化が進む➡活用不能となる➡相続人が代替わりする➡資金化して分割する

という流れになり易いのです。

共有の問題点は共有者の合意が得られなければ何も進まないことです。

この点に着目して「兎に角、実家を残したい」と考える方が「取り敢えず共有」を選択する事が多い様です。

しかし、「幼い時、自分にべったりだったのに中学生になったら自分を汚れ物扱いする娘さん」や「付き合っていた時は素直だったのに定年前の今は喧嘩ばかりの奥さん」を目にしてきた皆様ならお判りでしょう?

人はどう変わるか分かりません。「取り敢えず共有」にしても、問題を先送りにするだけで、代替わりすればA’にAの思い入れがそのまま引き継がれることは先ずありません。

本来、Aのやるべき事は合意形成だったのです。

共有にはせず、B、Cとの合意形成の中で、

①B、Cに共有持分に見合うお金を払って実家を丸々自分の相続分とする(代償分割と言います)

②Aの残したい部分だけ分筆して貰い(現物分割と言います)、残りはB、Cの共有として(資金化もあるかも知れませんが)B,Cに活用する事を任す

③Aの残したい部分だけ分筆して貰い、残りはB、Cの共有としてB,Cから各持分をAが借りてAが有効に活用する

等を選択する方法もあった筈です。

自分の意に沿わない結果となるかも知れません。しかし、そのまま共有にしても将来の売却が避けられるわけではありません。A’にとって「取り敢えず共有」は厄介ごと以外の何ものでもありません。

先ずは今の相続人の皆様で合意形成を図って下さい。共有は問題の先送りであり、時間が経つ程、売却の可能性・親族間の繋がりが薄くなる可能性が高くなります。

安易に共有にすることなく、今後どの様な将来に向かいたいのかを話し合う機会を作ることこそが将来に何かを残す方法なのですから。

遺言書のみの終活についての問題点

終活を考えて遺言書を作成した、これで安心だ、と考える方も多いようですが、これは間違いです。遺言書の効力が発生するのは遺言者が亡くなった時です。生きている間、効力は発生しません。

先日、旦那様が意識不明になっている奥様からこのような相談を受けました。

「子供はいない。夫は、両親はなくなっているが兄弟がいる。

でも財産はすべて私に相続させるという公正証書遺言があるから、夫の預金をすべて引き出してほしい」

残念ですがその様な対応は出来ません。公正証書遺言であっても、遺言書は遺言者が亡くなって初めて効力が発生するのですから、生前では遺言書の効力は発生しないのです。預金である以上、払出には本人の意思能力が必要です。

生前に意思能力がなくなった場合の対策の1つに「任意後見契約」が考えられます。特に「移行型任意後見契約」を締結しておけば、意思能力がある間は本人が希望すれば特定の代理人に預金などの手続きをとってもらえる。一種の委任状の効果を持たせられますし、意思能力がなくなった後は本人が事前に指定した人に受任者となってもらえます。

遺言書だけでは「本人の意思能力がなくなってから亡くなるまでの期間」に対応することができないのです。

終活を考えるにあたってはこの「意思能力がなくなってから亡くなるまでの期間」への対策も重要となってきます。

また、当事務所では移行型任意後見契約の締結が間に合わず意思能力がなくなってしまった場合のご相談にも対応させて頂きます。

どうにもならないとあきらめる前に、ご相談いただければ幸いです。

個人事業主の相続・小規模企業共済と事業用不動産等

個人事業主の相続が発生した場合、ポイントとなるのは「小規模企業共済」「事業用不動産」「事業性預金」の取り扱いです。

ここでは各々の取り扱いを検討する際のポイントをお伝えします。

被相続人の中には「小規模企業共済」を行っていた方も多いと思います。

そのようなケースでは、被相続人の死亡で廃業する場合もある一方、例えば相続人の配偶者が事業を継承する場合もあると思います。先ず知っておくべきことは、「小規模企業共済」は「共済金A」、即ち個人事業主の死亡を事由として受け取る等のケースが一番運用効果が高いことです。

「小規模企業共済」は「承継通算」、即ち個人事業主の配偶者や子が事業を全部一人で継承する事も可能です。但し原則、継承者は「配偶者か子」に限られます。従って「相続人以外の方」が「承継通算」することは困難です。「相続人以外の方」が事業承継する場合、一般的には「共済金A」の事由で請求を行うことをお勧めします。

次に「事業用不動産」についてです。

被相続人の中には、自宅を仕事場として事業を行っていた方も多いと思います。仮に「配偶者や子」が事業を全部一人で継承する場合は「小規模宅地等の特例」を使って敷地の相続税評価額を最大50%引き下げる方法もあります。活用の検討をお勧めします。但し、相続人以外の方が事業を引継ぐ場合は活用出来ませんし、逆に相続税額が加算される場合もあります。

「配偶者に対する相続税額の軽減」を利用して、配偶者(妻)に相続させる方法をとる方も多いですが、次に配偶者(妻)の相続が発生した場合は「配偶者に対する相続税額の軽減」は使えませんし、場合によっては亡き父の相続税額と亡き母の相続税額を合算したらこんなに相続税額が多くなっていたのか等ということもあります。むしろ二次相続(配偶者死亡時の相続)も考えて、子が「小規模宅地等の特例」等の利用を検討することをお勧めします。

被相続人亡き後の配偶者(妻)の住まいは「配偶者居住権」の利用を行うことで確保できますし、自宅を相続した子の不動産に対する評価額も、軽減される可能性があります。

どの制度も全部一人で承継することが条件となりますが、承継しない相続人に対しては不動産の代わりに「小規模企業共済」の共済金を相続させる方法もあるでしょう。

最後に「事業性預金」です。個人事業主の場合、事業性預金の名義を「○○屋 〇山〇太郎」等にして利用している場合も多いことと思いますが、この場合も個人「〇山〇太郎」様の相続財産となります。原則、「〇山〇二郎」様が事業を承継しても名義変更して使用することは出来ません。新たに「〇山〇二郎」様名義の預金を作成する必要があります。

以上の点は税理士の方とご相談頂く必要がありますが、ご相談は相続を専門とする税理士の方にされる事をお勧めします。「配偶者居住権」や「小規模宅地等の特例」は一般の税理士の方が詳しいとは限らないからです。セカンドオピニオンとして相談される事も可能です。

相続が発生した場合、その時の相続税が一番安く済む方法や、一番全員の同意が取りやすい方法を選択するケースが目立ちますが、先ずは落ち着いて将来も見据えて考えることをお勧めします。相続手続きはやり直しがきくものではありませんから。

なお、遺言書があっても、相続人全員の同意を以って遺言書とは異なる遺産分割協議書を作成することで相続人全員の意に沿う相続手続きを行うことも可能です。

相続手続きのヒント‐法定相続情報一覧図の利用

 相続手続においては、相続人を特定するため、被相続人が生まれてから亡くなるまでの一連の戸籍謄本が必要となります。

 その戸籍は一般的には生まれてから結婚するまでの一団、結婚してから亡くなるまでの一団に分類されます。大抵は生まれたときに父親の戸籍にその生誕が記載され、その後父親が本籍を変更しなかったら結婚するまでの戸籍は1通、結婚してから本籍を一切動かさなかったら結婚後の戸籍も1通。一般的には最低2通の戸籍が必要となります。

 但し役所の都合で例えばコンピュータ化等、戸籍の様式が変更になることもあります。その場合は更に1通戸籍が増える事がありますし、戦後の戸籍法改正で家単位の戸籍から現在の家族単位の戸籍に変更となる時期に生まれていたなら、同じく1通戸籍が増える事があります。

 いずれにしても1通戸籍を取れば用が済む方はまずいらっしゃいません。その結果、相続手続きに当たって銀行に戸籍を要求された場合、その都度、戸籍の1セットを郵送手続きや持参する羽目に陥ります。

 この不便を解消するのが法定相続情報一覧図です。これは簡単に言うと被相続人が誰で、相続人に誰がいるかの相関関係を示した図です。一連の戸籍謄本を取得した後、所定の申請書等と共に一覧図を作成して所定の法務局に申請すると、法務局が一覧図の内容を確認して、間違いがなければ、正しく被相続人との相関関係が記載されている法定相続情報一覧図として法務局が認証印を押した写しを発行してくれるのです。法務局の手数料はかかりませんし、何通とっても交付手数料は無料です。

 法定相続情報一覧図はありがたいことに、銀行では戸籍謄本のセットと同じものとして扱ってくれるのです。

 つまり手続きをする銀行の数だけ発行してもらえば、戸籍謄本のセットが1つしかなくても代わりに相続情報一覧図を銀行に渡すことで、一遍に複数の銀行手続きに着手することも可能となるのです。

 発行手続きの詳細は法務局のHPでも確認できますし、弁護士、司法書士、税理士、行政書士に代理人として申請手続きを依頼することもできますので、一度確認してみてください。

 戸籍謄本の取得に苦労したという方は是非もうひと頑張りして法定相続情報一覧図を作成されることをお勧めします。

相続財産の調査・負の相続財産

相続財産には正の相続財産と負の相続財産があります。

そして「正の相続財産ー負の相続財産=相続税の課税財産」となります。

少し専門的に言えば、「被相続人の債務で相続開始時に現に存するもののうち、その納税義務者の負担に属する部分の金額」が負の相続財産となりますが、相続財産調査に当たっては、先ず何が負の相続財産になりうるか、を知っておく必要があります。

大きく言えば「被相続人の負担に属するもの」で、「被相続人の債務で、相続開始時に現に存するもの」や「被相続人に係る葬式費用」が対象となります。

「被相続人の債務で、相続開始時に現に存するもの」には住宅ローンや、公租公課(固定資産税など)がありますし、「被相続人に係る葬式費用」には通夜費用、仮通夜費用、本葬式費用、納骨費用、お布施、戒名料の他、通夜葬儀会場設置費用、遺体運搬費用があります。

負の相続財産調査として、先ずは以上の費用に係る領収書を整えてください。正の相続財産調査には金融機関への依頼などが必要となりますが、負の相続財産調査は以上の領収書が手元にあるか否かが重要です。紛失などのないように管理することが必要です。

一方、初七日法会費用や四十九日法会費用、遺体解剖費用は対象となりません。

その他、墓地購入費用や墓地購入ローンも対象となりません。

一旦、全ての領収書を揃えて、負の相続財産となるか否かを分類して行くことが大切です。

定年でリタイアしたとき考えること(NISAとiDECO)

60歳で定年して考える事の一つに、今後の資産積み立て方法もあると思います。

サラリーマンだっだ頃は、厚生年金や企業型確定拠出年金、財形貯蓄制度の利用などで自然に積み立てられていた資産も、退職後は自分でかじ取りをしなければなりません。

ここでは60歳以降の方が抑えておくべきNISAとiDECOの違いを見ておきます。

まず、投資可能期間です。NISAは無制限となりましたが、iDECOは65歳までです。

税優遇はNISAが運用益非課税に対し、iDECOは掛金全額所得控除、運用益非課税、受取時は公的年金等控除や退職所得控除が適用可能です。

年間投資額はNISAがつみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円に対し、iDECOは国民年金第一号被保険者(自営業者等)の場合で、現在月68,000円が拠出限度額となっています。

ここまでは税制面でiDECOの優位性が目を引きますが、問題は途中引出しです。

NISAはいつでも途中引出しが可能ですが、iDECOは年金ですので老齢給付、障害給付、死亡一時金、脱退一時金のいずれかになります。また60歳以降で始めて加入する場合は加入後5年経過しないと受給出来ません。

運用している方の年齢が高くなるほど、予測できないときに払出が必要となる可能性は高くなる点は認識しておいた方が良いでしょう。

またiDECOの場合、金融機関への保管料等が必要となる点も認識しておく必要があります。企業型確定拠出年金の場合は勤め先が払ってくれていましたが、個人型確定拠出年金の場合は預けている個人が払う事となります。

運用を始める方の立場は千差万別で、どちらが良いとは一概には言えませんが、二者択一をする場合は少なくとも以上の点は認識しておいた方が良いでしょう。

またNISAもiDECOも金融機関によって取扱商品は違います。まずは上記の両者の違いを理解した上で、各金融機関の取扱商品やサービス、立地条件等も含めて検討されることをお勧めします。

定年でリタイアしたとき考えること(保険・年金)

人は誰もが年を取り、サラリーマンはいつか定年を迎えます。そのまま継続雇用で会社に残る方もいれば、定年を契機に一旦リタイアする方もいます。

リタイアしたとき、頭に浮かぶことの中に健康保険や年金があります。

先ず退職後の健康保険ですが、再就職しない場合、選択肢は3つです。

①任意継続被保険者となる。②国民健康保険に加入する。③健康保険に加入している家族の被扶養者となる。

任意継続被保険者とは勤めていたときに加入していた健康保険に継続して2年間加入する制度です。任意継続被保険者となるには、被保険者としての資格喪失日(退職日)から20日以内に保険者であった協会や組合に申し出る必要があります。

一方、国民健康保険の被保険者となるには、資格喪失日から14日以内に自分の住所地を管轄する市町村に申し出る必要があります。

つまり、①、②、③を自由に選択したい場合は最短14日以内に決定する必要があるのです。

任意継続被保険者の場合、勤務中の自己負担分は半分でしたが、退職後任意継続被保険者となった場合は全額、単純に言えば、倍の金額を払う必要があります。また、任意継続被保険者となれる期間は2年間のみ、その後は国民健康保険に加入するか、被扶養者となる必要があります。

国民健康保険の保険料は、市町村ごとに前年の所得や保有資産によって決定されますが、一般的には加入後の保険料はかなり割高になる可能性があります。

その他、任意継続被保険者の場合、健康保険組合によっては独自の付加給付がある先もありますので一般的には健康保険より有利と言われています。

被扶養者となる場合は、扶養者による生計維持要件等があります。扶養者の保険料負担は増えますが、被扶養者にかかる医療費は扶養者の確定申告時、医療費控除の対象になりえます。

どれが自分に合っているかは人それぞれです。ただ、任意継続被保険者も国民健康保険も保険料の前納が可能であること、前納すれば月々納めるよりトータルの保険料は割引されることは覚えておいた方が良いでしょう。

無論、①、②、③を選択後でも、健康保険適用事業所に再就職した場合は改めて健康保険の被保険者となります。

以上の点だけを考えると、被扶養者となれないなら、一旦任意継続被保険者となり、2年後に国民健康保険加入という選択肢が一般的なのかもしれません。

年金は最低限以下のポイントを押えておく必要があります。

①原則65歳から給付となること、②60歳からの繰り上げ給付も可能だが、繰り上げをすると年金額が1か月当り0.4%減額されること(60か月なら24%の減額)、③繰り上げを行う場合は厚生年金と同時に行う必要があること、④66歳からの繰り下げ給付も可能で、繰り下げの場合は国民年金のみ、厚生年金のみ繰り下げの選択が可能であること、⑤繰り下げは最長10年可能で、繰り下げすると年金額が1か月当り0.7%増額されること(15か月なら10.5%、120か月なら84%)

よく、繰り下げした場合、貰い始めて何年ぐらいで65歳で受け取り始めた額と同額の額になるかを計算した記事も見かけますが、個人的にはいかがなものかと思います。

リタイア後は一切働かない、という方もいらっしゃると思いますが、それももったいないのではないでしょうか。もし自分のやってみたいことがあって、それで人に喜んでいただけたなら、芝居でも、漫才でも、レジ係でも、交通指導員でも、身体の動くうちは何でもやった方が良いと思います。

理想を言えば、リタイア後やってみたいこと等で65歳まで生活を繋いで、65歳から国民年金だけ貰う、やってみたいことがうまくいっていれば厚生年金給付を66歳以降まで伸ばす、と言った所が、社会人としての人生をフェードアウトするに当たって妥当な所ではないでしょうか。無論、60歳から65歳になるまでの間に人生のキャッシュフロー表をチェックしておく必要はあります。しかし、リタイアしていきなり人生のキャッシュフローと言われて、考え込むのもいかがなものかと思います。

先ずは健康保険をどうするか考えて、年金は最低限のポイントを抑えてじっくり構えることも大切なのではないか、と思います。リタイアした後までストレスに悩まされる必要はないのですから。

被相続人の医療費と準確定申告

一般的に準確定申告は死亡者が自営業者だった、年間2千万円以上の給与所得があった、公的年金が年間400万円以上あった人などが対象となります。

この情報を知って、「私たちには関係ないもの」と考える方も多いと思います。しかし、準確定申告をする、しないに関わらず、被相続人にかかった医療費を見直してみることは必要かと思います。

年金の源泉徴収票をご覧になると分かりますが、一般的に年金は所得税等が控除されて支払われています。ご高齢でご病気などがある方は、医療費控除の確定申告をして源泉徴収された税金から還付を受けられる方もいらっしゃると思います。

準確定申告というのは毎年2月から3月にかけて行っている確定申告を被相続人の死亡後4か月以内に行う手続きなのです。つまり被相続人が支払った医療費のうち、亡くなった年の1月以降に被相続人が支払った医療費は準確定申告の医療費控除の対象になるのです。現代社会において、大抵の人は亡くなる時に病院でなくなります。亡くなるまでの医療費の内、被相続人名義で支払っている医療費は準確定申告における医療費控除の対象になるのです。

仮に配偶者が被相続人の医療費を支払っていたなら、その医療費は、被相続人の未払医療費を相続人である配偶者が支払ったものとして、相続税法上、配偶者の債務控除の対象になります。相続人である子が支払っていても同様です。

但し気を付けて頂きたいのは、被相続人が、子の扶養者になっている場合、つまり被相続人の生前、被相続人の医療費を子が医療費控除の対象として申告していた場合です。その場合、子が支払った被相続人の医療費は例年通り、子の確定申告において医療費控除の対象として申告する必要があります。

相続人でもない、全くの他人が、被相続人の医療費を支払っていた場合は、相続人に対して弁済を請求することになり、赤の他人の税法上の控除などは行われませんが、その様なケースは現代社会においてまず発生しないでしょう。

つまり、被相続人の医療費一つについても何らかの税務上の処理が発生する場合があるのです。相続に当たっては、銀行預金などの正の相続財産のみならず、負の相続財産(債務控除)についても考えておく必要があります。場合によっては準確定申告の対象となり、還付が受けられるものもありますから。なお準確定申告の還付金は、相続財産に当たりますのでそのあたりも気を付けて下さい。

危険な相続・片親と兄弟姉妹が相続人であるとき

片親が亡くなって、残されたのはもう一人の片親と自分の兄(弟)、というケースはよく見かけます。そして残った親が亡くなった後、仲が良かった兄(弟)との縁が切れた、というケースも耳にすることがあります。

これは兄弟がそれぞれ結婚している場合に見られがちです。片親が存命の間は、兄弟は親を軸にまとまります。残された親は兄弟にとって大切にしたい共通の人ですから。

相続財産についても、大方の兄弟は亡くなった父(母)の財産は取り残された母(父)に相続させることでまとまることが多いです。悪い事ではありません。

しかし、問題は残された片親が亡くなった時です。

両親が亡くなったあとは、それぞれの兄弟にとって一番大切な人は、自分の配偶者や子になります。家族が内の人であり、兄弟は外の人となります。大切にしたい共通の人がいなくなるとどうしても意見がまとまりにくくなり、結果遺産分割において仲違いしてしまうことがあります。

一旦お互いの主張を抑えて、親の財産(不動産など)を共有にする兄弟も多いですが、時間が経つと将来の取扱いについての意見が合わなくなって、結局売却して遺産分割せざるを得なくなり、最悪、遺産分割後は兄弟の縁が切れてしまうこともあります。

両親亡き後、兄弟で円満に取り扱うに当たっては、お互いに相当の努力が必要となることは、覚悟しておく必要があると思います。

こうした問題を回避するには、片親が存命中に、片親と兄弟が話し合って、両親亡き後の財産をどうするかも考えて、遺産分割を行うことが必要なのではないかと思います。具体的には片親が相続するのは現預金のみとして、他の不動産などは子に相続して貰う等の方法です。

相続財産の基礎控除は3,000万円+600万円×法定相続人の人数です。仮に片親と子2名が相続人である場合は4,800万円が基礎控除額となります。

よく、配偶者に対する相続財産の軽減制度を利用してすれば、配偶者の相続する財産は1億6,000万円まで非課税となるのだから、残された片親の相続財産はなるべく多くした方が良い、と考える方も多い様ですが、それは問題の先送りです。

両親亡き後、子2名の非課税枠は4,200万円になります。仮に残された片親が全ての財産を相続し、その金額が1億円だったとします。そしてそのまま1億円の財産が残っていたとすれば、単なる納税の先送りです。仮に相続財産が4,000万円だったとしても、こんどは兄弟だけで遺産分割協議を行うわけですから、前述した仲違いに発展する可能性は十分あります。

むしろ片親が存命中に、将来兄弟がどうあって欲しいかも踏まえて、遺産分割について話し合った方が、そして出来れば片親が存命中に、親子了承の上で、現預金以外の財産を子に相続して貰った方が、遥かに争いが少ないのではないかと思います。

例えば、実家の土地建物の名義は子の一人としても、家屋に配偶者居住権登記を行えば、親の存命中は居住権が認められますし、子の相続する不動産の評価額も低く抑える事ができます。

その代わり、実家を相続しない子には、代償として実家を相続する子から幾らかの現預金を支払うとか、実家を相続する子が相続を契機に親と同居を始めるとか、考えられる方法は多くあります。むしろ残された片親の将来の生活と、両親亡き後の将来も考えた相続を、親の希望も聞きながら共に話し合うことの出来る絶好の機会なのです。

親もまだ元気なので、とりあえず残された片親に全て相続させる。この「とりあえず」という考えはなるべくしない方が宜しいのではないか、と思います。