資産運用の基本・なぜドル建てが目立つのか?

新聞やTVを見ると、やたらドルに関わるニュースが目に付くのではないでしょうか?

世の中の通貨はドルだけではありません。銀行窓口にはユーロや豪ドル建ての投資信託がありますし、通貨ではイギリスのポンドもあります。

最近では元による金融商品も出てきています。

でも石油と言えば1バレル〇〇ドルですし、為替相場と言えば1ドル〇〇円なのです。

決済額が多いからでしょうか?

世界で決済される通貨額の4強と言えば、一般的には米ドル、ユーロ、円、英ポンドが挙げられます。近年、元も決済額が増加して来ました。

現在の各通貨による決済シェアは、概ね米ドル40%、ユーロ35%、英ポンド6%、円・元が各3%という所です。

また、基軸通貨という考え方もあります。ちなみに基軸通貨とは国際貿易決済や金融取引時の基準となる通貨です。一般的には米ドルとユーロを指します。

米ドルとユーロが各々決済の約4割を占めているなら、もっとユーロに注目が集まっても良い様にも考えられます。

しかし、日本で基軸通貨と言えばやはり米ドルなのです。

理由としては以下の3つが考えられます。

1つ目は、各国の外貨準備高に占めるドルの割合です。外貨準備高とは輸入代金の決済や対外債務の返済の為、各国政府が保有している外貨です。その合計の割合をみると米ドルが約60%、ユーロが約24%、円が約4%を占めています。日本の外貨準備高においても例外ではありません。

2つ目は、ドルが石油売買において決済通貨として扱われている事です。これはあくまで慣習上の扱いで法的に決められている訳ではありません。しかし、長年の信用力と利便性に基づき現在も国際的な石油売買の決済通貨として扱われています。

最後に、これは特に日本の銀行において言える事ですが、外貨を購入する場合は基本的に一旦米ドルを経由して外貨購入せざるを得ない事です。

例えば銀行で円をスイスフランやカナダドルやクローネに換金するとします。その場合、銀行は預かった円で先ず米ドルを購入し、その米ドルを使って市場からスイスフラン、カナダドル、クローネ等を購入するのです。これは先に記したように金融取引時の基準通貨が米ドルとなること、及び歴史的にも前後日本の主要貿易国がアメリカだった故に、決済の合理性の観点から米ドルを経由する決済システムが構築され、現在に至っていることが要因として考えられます。

つまり日本は輸入決済において米ドルを主力とし、特にエネルギー輸入においては米ドルをベースとし、かつ金融決済においてもドル経由で行っていることから、必然的に新聞やTVでもドルに関わる話が多く取り上げられることとなるのです。

これは資産運用を考える上でも重要なことです。国内で、円預金で運用していても、株式や債券で運用していても米ドルの影響から外れることはないのです。ドル以外の通貨で運用する場合も、少なくとも購入や円転の際は米ドルの影響を受けます。

一般に資産運用を開始するとき、金融機関は皆さんに為替リスクの説明を行います。それを聞いた方の中には為替リスクを避けるべく円預金に全てを預ける方もいらっしゃるかも知れません。しかし運用する以上、米ドルの為替リスクは不可避なのです。

資産運用をなさる方にはその点を踏まえて、今まで以上に新聞やTVなどを通じて米国の情報に着目して頂きたいと思います。

ご家族のために・認知症への対策/任意後見制度

第1講 高齢者の抱える認知症のリスク

 ご高齢者の中には、ご自身が亡くなった後の事を考え、ご家族のために遺言書のご用意等を行っている方も多い事と思います。

 しかし、現実にはご自身がいなくなってしまうのは「死」からではありません。

ご不快に思われる方も多い事は承知で、あえて申し上げますが、現在の日本社会において、ご自身がいなくなってしまわれるのは「認知症の発症」からなのです。

 現在の日本社会で暮らすには、本人の意思確認は原則絶対必要条件です。預金の開設・払出・解約、施設入居、不動産の処分・賃貸借、物品の購入等、日常生活に関わるものは全て本人の意思確認が必要となっています。認知症、すなわち本人の意思確認が出来なくなった途端、これらの日常生活は原則全て停止します。

 ご本人名義の預金からの払出で生活費を支払っていたなら、その後の支払が出来なくなります。ご本人名義の賃貸不動産があれば、賃貸借契約も、修繕も出来なくなります。ご家族が本人のために車いすを購入しよう考えても、本人名義の口座から払出は出来ません。その結果、ご家族はご本人の生活費や、車いすの購入費用を、ご家族名義の口座から立て替え払いせざるを得なくなります。仮に賃貸不動産をご本人の生活の糧として活用していた場合、修繕も出来ず、新たな契約も出来なくなります。

第2講 認知症となったときの対策

 認知症が発症した後の対策としては、法定後年人を立てる方法があります。

 家庭裁判所に法定後見開始の申請を行い、家庭裁判所が選任した法定後見人に、本人の財産管理と身上監護に係る法律行為を行って貰うのです。法定後見人なら預金の払出も、賃貸不動産の賃貸借契約も本人に代わって行うことが出来ます。

 しかし、法定後見を行うに当たっては、以下の2つの事項を認識しておく必要があります。

① 時間と費用がかかること

 法定後見開始の申立には相当の費用と時間がかかる上、後見が開始すると本人の意思能力が回復するまで、やめることは出来ません。高齢者の場合、亡くなるまで続くことが大半です。

まず、医師の鑑定を経た後、家庭裁判所に申立を行うため鑑定費用に約5万円、申立費用に約1万円、専門家への手続き依頼費用で約10~15万円、手続き完了まで3~4か月はかかります。

更に保有する資産額によっては第三者の後見人と後見監督人が付けられ、その方々に毎月1~3万円×2の手数料を、本人が亡くなるまで払い続ける必要があります。仮に手数料が月3万円×2として亡くなるまで10年かかったら720万円の費用が必要となります。

②後見人を指名できないこと

後見人の仕事は大きく分けると①財産管理及び身上監護に係る法律行為、②家庭裁判所への定期報告、の2つです。万一、後見人が財産の不適切な管理を行っていると判断された場合、家庭裁判所により後見人を解任される上、損害賠償請求が行われる恐れもあります。

そのため後見人によっては、何処に出しても問題とされない安全第一の資産管理を最優先される方もゼロではなく、必ずしも家族の希望に沿って資産を活用して貰えない場合もあります。

法定後見人は家庭裁判所が選任しますので、原則、誰が法定後見人になるか申立人は選べません。また選任後は、法定後見人に不満でも不服申立は出来ません。

法定後見人と介護を行う家族との考え方が一致しない場合、時に介護にとって障害となる場合もありえます。

銀行預金については別稿「親が認知症である場合に、親の預金を払い出して介護費用に使うための金融機関との交渉」で記載させて頂きました通り、後見人を選任しないで対応する方法もない事はありません。が、対応できる範囲に限界があることや、介護する方の時間と体力、ストレス等を考えると、率先してお勧めは出来ません。

本人が認知症を発症する以前なら、もっと有効な方法を準備しておくことが可能です。

第3講 移行型任意後見の選択

第2講で法定後見を説明しましたが、後見制度には法定後見と任意後見の2つがあります。本人の意思能力が既にない場合は家庭裁判所が後見人を選任する法定後見を行わざるを得ませんが、本人の意思能力がある間は、本人が後見人を選任できる任意後見を行うことが出来ます。

以下、法定後見と比較した場合の、任意後見のメリットを挙げておきます。

メリット1.時間と費用が削減できる

本人が後見人を選任しますので、後見人は家族でも大丈夫です。家族を後見人にした場合、大抵、後見監督人が家庭裁判所により選任されますが、後見人への手数料をゼロにしておけば、任意後見開始までの手数料はゼロ、開始後の手数料も監督人1名分で済みます。

当初費用も公正証書作成時に約5万円、専門家への手続き依頼で5~7万円です。

公正証書作成は2週間程度で出来ますし、後見が必要となった場合も約2か月で監督人選任により後見が開始出来ます。

(なお、任意後見開始申立時は家庭裁判所あて約1万円の費用はかかります)

契約手続きは本人と後見人となる方が公証人立会いの下、公証人役場で行います。万一、公証人役場に行けない場合は、公証人に出張頂くことも可能です。

無論、後見人となった家族が必ずしも法律行為に慣れた方とは限りません。その場合は事前に、後見人が代理人を選任出来る条文を加えておけば、後見人は必要な時に弁護士でも司法書士でも代理人を立てることが出来ます。

メリット2.本人のことをカバーできる範囲が広い

そして法定後見との大きな違いは即効型、将来型、移行型の3種類があることです。

即効型とは、任意後見契約を締結すると速やかに任意後見契約が発効する契約です。

将来型とは、将来認知症が発症したときに、申立てにより速やかに任意後見契約を発効させる契約です。いずれも認知症が発症した場合に家族を後見人とすることのできる対策です。

自分で後見人を選任しておき、自分の意向を伝えておくことが出来るだけでも、認知症発症後のご本人およびご家族の負担は相当軽減できます。

しかし、それだけでは十分ではありません。中には突然認知症が発症する場合もありますが、大抵の方は身体の衰えが進行し、行動範囲が狭くなり、耳が遠くなり、コミュニケーションが取り難くなる、字を書こうにも筆圧が弱くなる等を経て認知症の発症に至る方が多いのではないかと思います。

この健康な状態から認知症に至るまでの期間をカバーできる可能性があるのが移行型任意後見なのです。

移行型任意後見契約とは「委任契約兼任意後見契約」の事を指します。将来後見人になって頂く方に、任意後見発効前は委任契約により、受任者(代理人)として本人の日常の法律行為を行って頂き、認知症発症後は後見契約により、後見人として働いて頂く契約です。

つまり、後見契約発効前は代理人として本人の意向に従った法律行為を単独で行うことが出来ます。

相手方によっては別途本人の意思確認を求められる場合もありますが、任意後見契約書は公証人役場で公正証書として作成しますので、代理人としての信用力はかなり強いものとなります。

万一、認知症が発症しても既に後見契約書は出来上がっていますので、家庭裁判所への後見開始の申立から発効までの期間はかなり短縮できます。

メリット3.本人の意思が反映され易い

そして1番のポイントは、予め契約書に条文を入れておけば、委任契約の発効を本人が希望するときから、とする事が出来ることです。

後見契約は認知症発症が契機となりますので、本人にはどうにもなりませんが、代理人に手続きを任せる委任契約は、契約後に本人の判断でいつから発効させるのかを決定できるのです。

場合によっては後見契約発効まで、委任契約を発効させないこともできます。

本人の意思がある間は全て本人の意思に従って手続きを行えるという点、および認知症発症後は事前に本人の意を汲んだ方を後見人に出来るという点で、移行型任意後見契約はご本人のみならずご家族にも優しい対策と言えます。

終講 まとめ

人間誰しもいつ亡くなるか、いつ認知症になるかは自由に決めることが出来ません。

しかし、人間は法律や社会制度で、自由にならない部分をカバーする手段を備えてきました。

現在の日本の社会制度において、移行型任意後見は健康な状態から認知症に至るまでの期間をカバーできる上、比較的円滑に後見へ移行できる点で、又、本人の意を汲んだ後見人を選任出来る点で、不安なく老後を過ごすための有効な手段の1つと言えるでしょう。

無論、任意後見は万能ではありません。法定後見人に認められている取消権はないですし、任意後見の対象となる法律行為は事前に契約書に明記しておく必要がある等、問題がないことはありません。また、最近は家族信託など資産管理の面では後見制度より対応力が高い可能性のある制度も出てきています。

しかし、どの制度を選ぶかはご本人やご家族が、何を最優先に考えるか、によります。

せめて一人でも多くの方に移行型任意後見契約の有効性を知って頂き、介護と共に発生するご家族への障害を少しでも予防することを考えるための一助として頂ければ幸いです。

親が作った子供名義の預金を、子供に引き渡すときの注意点

親御さんがお子様名義の口座を作られて、将来の教育資金等の預け入れを行うことは現在でも行われています。

お子様が18歳を迎え、成人となったのを契機に印鑑と通帳を引渡し、以降は自分の預金として管理させることは、重要な教育の一つです。

ただ、ここで注意頂きたいのは通帳等の管理です。

マネーロンダリング等不正取引の防止が求められる今日、本人への通帳及び印鑑の引渡しを怠ると思わぬ手間がかかる事があります。

第1講 本人への引渡しが済んでいない場合

もしお子様が18歳を過ぎているのに通帳、印鑑の引渡しが終わっていない場合は、速やかに引き渡すことをお勧めします。

現代社会はマネーロンダリング、すなわち不正取引に対する目が非常に厳しくなっています。

仮にAさんがBさん名義の口座を保有しており、それを金融機関が知った場合は、Aさんは借名取引、つまり本人以外の人の名前を使って取引をしている疑わしい先とみなされてしまう可能性があります。

マネーロンダリング等の言葉が、まだ世の中に出てきていない頃に口座を作った方は、たかが成人した子供の預金をもっているだけ、とお考えがちです。

しかし、今、世の中で行われている不正取引は、犯罪者が自分以外の名義の口座を使用して行われているのです。親が自分の名前ではない、子供の口座を持っていることは、表面上は、犯罪者が行っている行為と違いはありません。

もし、親が子供名義の預金通帳を持って、金融機関の窓口で「この口座は本当は自分の口座だ」と言って払出を行おうとしたなら、金融機関は立場上、第三者名義預金を保有し、払戻に来た人物(マネーロンダリングの疑いあり)として扱う事となります。

また、仮に不幸にも親が通帳や印鑑を保有したまま亡くなったとしたら、子供名義の口座は、税務署も亡くなった親の財産として相続税の対象とみなす可能性があります。

子のために積み立てた預金である以上は、子が成人した場合、速やかに通帳と印鑑を引渡し、子自身が金融機関に連絡し届出をしている筆跡を変更しておく必要があるのです。

第2講 引き渡しが終わり、喪失しているものもないとき

成人後、本人に管理を任せ、通帳や印鑑が本人の手元にあるなら問題はありません。

通常は本人が印鑑と通帳を本人確認書類と共に金融機関に持参すれば、本人確認書類で本人であることが認識され、通帳持参によって金融機関の預金管理データが本人が預けているという事実が一致し、印鑑によって本人が管理している事が確認されます。窓口に持参したときは今後の取引に支障が出ないように、金融機関に登録してある筆跡を親のものから自身のものに替えておくことを忘れないようにして下さい。

第3講 引き渡しが終わっているが、喪失しているものがあるとき

問題は印鑑や通帳が手元にない場合です。

本人に管理が移り、届出の筆跡が本人のものと変更された後なら良いのですが、通帳や印鑑がなく、筆跡も親のままの場合は、名義人の本人確認だけでは済みません。

具体的には、当初の筆跡が本人のものでないとの理由で、当初お届を頂いた方(親)から、「この預金は子に引渡し済みであること」を称する書類の提出を求められる可能性があります。

終講 まとめ

万一、当初の預金作成者である親が既に亡くなっている場合や、認知症になっている場合、手続きは更に複雑になります。

具体的には、親が亡くなっている場合は相続手続きが求められますし、認知症になっている場合も相続手続きに準じた手続きが求められます。

子のために子供名義で作った預金がありましたら、成人後は速やかに本人の管理に移し、届出の署名を差し替える事をお勧めします。なお、その際は印鑑、通帳等の保管にくれぐれもご留意ください。

確定拠出年金・意外と知らないマッチング拠出とライフプラン拠出の違い

最近、確定拠出年金制度が改正され、企業型確定拠出年金を行っている方も、個人型確定拠出年金を行う事が出来るようになりました。しかし、ここで突き当たる壁がマッチング拠出です。

マッチング拠出がされている場合、企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金は一緒に積み立てることはできません。

他方、企業型確定拠出年金を行っている企業の中にはライフプラン拠出という方法をとっている企業もあります。ライフプラン拠出がされている場合は企業型確定拠出年金を積み立てている間でも個人型確定拠出年金の開設が出来ます。

同じ拠出金なのに何故このような違いがあるのでしょうか?

この違いはマッチング拠出は従業員拠出、ライフプラン拠出は企業拠出であることによります。既に従業員が拠出しているマッチング拠出の場合は、、個人の拠出を二重に出来ないという点で、個人型確定拠出年金を開設出来ないのです。

一見、共に拠出金控除後の金額が給与として支払われますので同じ様に見えますが、意外な相違点があります。それは額面給与への影響と社会保険料への影響です。

マッチング拠出=従業員拠出の場合は、先ず額面通りの給与を受け取った後に、従業員の給与から確定拠出が行われます。給与からの支払が前提ですので従業員の受け取る額面給与は拠出を行っても影響はありません。社会保険料は額面給与に基づいて計算されるので積み立てをしても、しなくても、負担する社会保険料は変わらないことになります。

ライフプラン拠出=企業拠出の場合は、事前に給与の中にライフプラン給付金という枠を設け、給与として支給できるものの、もし従業員が希望すれば、ライフプラン給付金を上限に、従業員が希望した金額を拠出金として差し引き、拠出金を控除した金額を給与として支払うという制度です。拠出する分、額面給与が減るため、拠出額が大きくなればその分社会保険料は減少します。

負担する社会保険料が減れば、その分手取りは増える事となりますが、社会保険料は将来の厚生年金の計算基礎となります。計算基礎が減れば、将来の厚生年金は少なくなる可能性があります。

なお、税金への影響ですが、従業員拠出の場合、拠出金は小規模企業共済掛金控除として年末調整時に所得金額から控除してもらう事が必要です。

企業拠出の場合、拠出金は企業が福利厚生費として処理しますので、年末調整時の手続きは必要ありません。

いずれの場合も所得から控除されますので、両者の違いは少ないと言えます。

給与金額にもよりますので一概には言えませんが、理論上はライフプラン拠出の場合、ライフプラン給付金を確定拠出に回す分、額面給与は減り、厚生年金の計算基礎を減らすことになるので、確定拠出年金は増えるが厚生年金は減る可能性が出てきます。

この場合、ライフプラン給付金を給与として貰い、個人型確定拠出年金を別途開設し、給与の中から個人型確定拠出年金を積み立てることで厚生年金が減少する可能性を削減することもできます(但し、個人型確定拠出年金の場合、年間の管理手数料等が別途発生しますし、企業型と併用する場合は個人型の積立限度額が小さくなる等、運用損益や運用条件を踏まえて考える必要があります)。

昨今、社会保険制度は日々時代に合った制度へと改善されています。ご自身の勤務条件等をご確認頂き、或いはFP等にご相談頂き、ライフプランに合った積み立てを選ばれることをお勧めします。

定年後の住宅ローンをどうするか

「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」により、定年年齢を65歳未満と定めている事業主は、①定年制の廃止、②65歳までの定年の引き上げ、③65歳までの継続雇用制度の導入、のいずれかの措置を講ずることが必要となりました。現在は多くの企業で継続雇用制度が導入されています。

しかし、継続雇用制度を利用しても、60歳以降の賃金は大幅に下がり、これからの生活をどうしようと考えられるサラリーマンの方が大部分ではないでしょうか。特に60歳時点で住宅ローンを抱えておられる方にとっては頭の痛い事と思います。

一般論では退職金で住宅ローンの残債を一括返済することが推奨されていますが、今後の生活を考えるとそう簡単に決断もできないことと思います。

その様な場合にリバースモーゲージによる借り換えを利用する、という考え方もあります。リバースモーゲージとは自宅を担保に借入を行い、生前は借入元本を返済することなく自宅に住み続け、死後に自宅を売却する等して借入元本を返済する制度です。

例えば住宅金融支援機構が提供している「リ・バース60」の場合、既存の住宅ローンの残高および借換費用等も対象とされ、債務者および連帯債務者が満60歳以上の場合なら、住宅および土地の担保評価額×50%または60%、かつ8000万円以下で、既存の住宅ローン残高以内を融資限度としています。

メリットとしては、①元本返済は死後に行うため、月々の返済が利息部分だけに抑えられる、②自宅に住み続けられ、借り入れた本人の死後も配偶者が連帯債務者である場合、配偶者も引き続き居住できる、③返済方法は死後自宅を売却等するか、生前に現金による繰上返済もできる、等が挙げられます。

注意点としては、①融資限度額が定期的に見直され不動産価額が下落し、借入残高が限度額を上回った場合、差額を返済するか、金利を引き上げられる可能性がある、②借入限度額が担保評価額次第であること、特に債務者および連帯債務者が満50歳以上満60歳未満である場合は担保評価額×30%が上限とされてしまう、③契約に当たって推定相続人全員の合意が必要、等が挙げられます。

但し、不動産価額の下落で死後の売却後、残債が残った場合でも「ノンリコース型」にしておけば相続人に残債の返済義務は残りませんし、年齢による担保評価額の問題も、本人が60歳以上で単独債務者として契約すればクリアできる可能性もあります(その場合契約者の死後、配偶者が契約を引き継ぐ必要があり、再度審査が必要となりますので、配偶者が60歳以上となったら連帯債務者として変更契約が可能となるのか等、事前に金融機関とよく相談しておく必要があります)。

なお、既存の住宅ローンについては直近12か月分の返済が遅滞なく行われていることが条件となることは言うまでもありません。

収入確認書類としては、

給与所得者、年金受給者:源泉徴収票等

個人事業主等:確定申告書等

同族会社役員:法人税の確定申告書等

年金未受給者:ねんきん定期便等

が求められます。

借入限度額の目安となる担保評価額を検討するに当たっては、毎年支払われてる固定資産税納税通知書に記載している固定資産税評価額が参考となります。固定資産税評価額は公示価格の70%で評価されており、公示価格は、一般の土地の取引価格の指標となっているからです。つまり固定資産税評価額÷70%がその土地の公示価格と判断できるのです。

将来の見通しに不安があるという場合、一旦、リバースモーゲージによる借り換えを導入して家計の資金繰りを安定させた後、再雇用や再就職後の環境を判断し、環境に合わせて少しづつ繰上返済を行ってゆくのも1つの方法ではないか、と思います。

定年を迎えられると、周りの環境は一変する一方、住宅ローンの返済は今まで通りにやって来て、どうしていいか分からなくなることもあるかも知れません。でもだからと言って立ち止まってしまわれる事はお勧めできません。まずは社会保険制度、金融制度、金融商品等、あらゆる方法を検討してみてください。ここではリバースモーゲージを紹介しましたが、10人の方がいらっしゃれば10通りの答えがあります。冷静にご自分の状況を整理して、出来る事を一つづつ積み重ねて行かれることをお勧めします。

法定相続人 意外と知らない民法と相続税法の違い

相続税の非課税限度額は法定相続人の数が多いほど大きくなります。

ならば養子を増やせばその分法定相続人が増えて非課税限度額も多くなるから相続税を免れることが出来るのでは?このような理由から養子縁組を考える方もいらっしゃるようです。

相続税法上、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で算出されるのが相続税法上の非課税限度額です。法定相続人が配偶者と子2名の場合、3,000万円+600万円×3=4,800万円となります。

では、法定相続人が配偶者と子2名で相続財産が6,000万円の場合、養子を2名とったらどうなるでしょう?法定相続人の数は5名となります。非課税限度額は3,000万円+600万円×5=6,000万円となり、相続税はかからないのでしょうか?

相続税法上、法定相続人の数に加算される養子の数は次のように定められています。

・実子(自分の子)があるとき、又は実子がなく養子が1名のとき・・・1名

・実子がなく養子が2名以上であるとき            ・・・2名

つまり配偶者と子2名がいる場合、仮に養子を2名とったとしても、実子がある場合に該当し、税法上加算されるのは1名となり、法定相続人は4名、非課税限度額は5,400万円となります。

他方、養子にも民法上の法定相続分はありますので、法定相続分に従った遺産を請求される可能性があります。仮に遺言書で養子に残す遺産を0にしても、遺留分侵害額請求権(最低限の遺産を受ける権利)が行使されれば法定相続分×1/2の遺産を渡さなければならなくなる可能性もあります。

同じ「養子」や「法定相続人」という言葉を使っていても民法と相続税法では取扱いが異なる場合があります。万一、相続税の削減を目的に養子をとられることをお考えなら、ご注意頂くことをお勧めします。

相続放棄の影響と留意すべきこと

「この預金は息子が放棄すると言ってくれたから自分の預金として手続きが出来る」

他の相続人が放棄すると言ったのであとは自分一人で全て手続きが出来ると考えがちですが、所定の手続きを行わないと思わぬ問題が発生する場合があります。

第1講 相続放棄の影響による問題

相続放棄が成立すると、その相続人は初めから存在しなかったものとされます。

亡くなった方に借入金がある場合、相続放棄すれば良い、と言われるのはこのためです。

つまり相続放棄によって初めから存在しなかったものとして扱われますので財産を受け取る事がないという意味で、借入金も相続財産として受け取ることがなくなるわけです。

例を挙げて説明します。

(事例1)

Aが亡くなり配偶者Bと子2名C、Dの計3名が相続人となる場合です。

このとき、子Dが相続放棄をすると、相続人はB、Cの2名となります。

子Dに子供Eがいたとしても、Dは初めから存在しなかったのですから相続権がEに移ることもありません。

その結果Aに借入金があった場合、それを相続するのはBとCだけで、DやEには一切関係ないものとなります。

問題は、相続権が思わぬ方に移る事がある点です。

相続権は

第1順位者:配偶者と子

第2順位者:配偶者と父母

第3順位者:配偶者と兄弟姉妹

の順で取得され、例えば子と父母(第1順位の人と第2順位の人)が相続権を取得することはありません。先ず第1順位の人、第1順位の人がいなければ第2順位の人という具合に移って行きます。

なお配偶者は常に相続人となります。

次に相続権の異動の例を挙げてみましょう。

(事例2)

Aが亡くなり、配偶者Bと子2名C、Dがおり、更にAの実母Fが存命している場合です。

放棄がなければB、C、Dの3名が相続人となります。

仮にAに借入金があり、Bが一人で借入金を背負うつもりで子2名に相続放棄をさせたとします。この場合、C、Dは初めからいなかったこととなり借入金を相続することはありません。しかし、そうするとAには初めから子がいなかったこととなり、相続は第2順位の状態で発生したこととなりますので、Aの死亡により相続人となるのは配偶者Bと実母Fになります。

実母であるFならAの借入金の相続も仕方ないと、ご了承されるかも知れません。

では次の事例はどうでしょう?

(事例3)

Aが亡くなり、配偶者Bと子C、Ⅾがおります。

Aの両親は既に亡くなっています。ただ、Aには亡くなった兄Eがおり、Eには子F(Aの甥)がいるとしましょう。生前疎遠だったことからBはFとは年賀状も交換していません。

事例2と同様、Aには借入金があり、Bは自分一人で借入金を背負うつもりで子C、Dに相続放棄をさせました。この場合、C、Dは初めからいなかった事となり借入金を相続することはありません。

しかしそうなるとAは死亡時、配偶者はいるが子はおらず、両親もいなかった事となり、相続人は配偶者Bと兄E、但しEは亡くなっていますので子のFが相続人となります。

貸出先である銀行はC、Dの相続放棄を確認すれば、配偶者Bに借入金の今後の取り扱いを相談すると共に、相続人となったFにご案内文書等で通知する事となります。

Fも突然の通知に困惑し、場合によっては弁護士に相談し、その弁護士から今度はBに連絡が入るかも知れません。そうなったら泥沼です。もはや親族同士では解決できなくなり、事態は複雑化し、とんでもない争族に発展する可能性もあります。

仮にFが銀行からの文書を理解できず放置していたら、相続放棄出来る期間が経過し、知らないまま債務者になっているという可能性もあります。

以上、相続放棄の影響によって生ずる問題の事例を挙げてみました。放棄の影響を認識していないと、取り返しのつかない事態が生ずる恐れもあるのです。

第2講 相続放棄の手続きによる問題

相続放棄は相続人が「放棄する」と言っただけでは効果は生じません。

相続人が家庭裁判所に申請し、受理されることが必要です。

申請できる期間は、自分が相続人となったことを知った時から3か月以内です。

例えば父が亡くなると、子は相続人となりますが、父が亡くなったことを知っていたのに相続人になっている事は知らなかった、等の理由は家庭裁判所には通用しません。

何もせずに3か月経過してしまえば、子は相続となってしまいます。

注意すべきは相続放棄すると言った相続人が、家庭裁判所への申請が必要ある事を知らなかった場合です。

相続放棄は申請期間内に家庭裁判所に受理されて初めて効力が発生します。何もしなかった場合はそのまま相続したものとなります。

例えば相続財産が銀行預金と不動産で、相続放棄の申請を忘れていた場合、放棄を忘れた相続人も相続人として手続きが求められます。借入金の場合も同様です。亡くなった方が例えば住宅ローンの保証人だった場合、保証債務も相続財産として、相続人としての手続きが求められます。

終講 まとめ

相続放棄は相続人本人が申請するものです。申請を忘れることは本人の問題ですが、いざとなると「前もって放棄すると言っていた」「申請が必要とは知らなかった。知っていたのに教えなかったお前が悪い」等とおっしゃって、思わぬ争族に発展することもあります。

申請は個人の問題というものの、その後の影響を考えれば、お手続きについての認識や進捗管理は、相続人同士の十分な意思疎通や注意が必要となります。

なぜ一連の戸籍を要求されるのか?

「名義人が生まれてから現在までの戸籍謄本を準備してください。」

「亡くなった方のお父様とお母様が成人してから、ご本人が亡くなるまでの謄本をお願いします。」

自分の戸籍を見れば、自分が相続人である事はわかるではないか?と思われる方も多い事と思います。なぜ金融機関は相続手続き等を行うときこのようなお願いをするのでしょうか?

まず戸籍謄本についての用語を確認します。

戸籍とは:国民の身分関係(出生、婚姻、死亡、親族関係等)を登録し、公に証明するための公簿

筆頭者とは:戸籍の最初に記載されている者

本籍(地):戸籍の所在場所

戸籍謄本:公簿に記載されている全ての者の記録。戸籍全部事項証明のこと。

少し言い換えてみましょう。

先ず、筆頭者ですが、その戸籍の代表者と考えてください。戸籍はお父様やお母様等の代表者単位で作られています。

筆頭者が、戸籍を置く場所である本籍地を管理する役所(市区町村)に申請することで戸籍が作られます。

戸籍が作られると役所は戸籍に記載されている方から、出生、婚姻、死亡等家族についての届出を受け付ける毎に戸籍にその事実を記録して行きます。これは本籍地がその役所の管轄外となるまで続きます。

役所は本籍地が自分の管轄内にある間は家族について届けられる度に内容を戸籍に記録しますが、管轄から離れた後や、管轄となる前のことは記録しません。管轄を離れた届出内容は、新たに管轄することとなった役所が、新たに作った戸籍に記録して行きます。

この他にも近年では届出の有無に関わらず、戸籍の様式が変更となったことを理由に本籍地管轄役所内で新しい戸籍が作成されています(戸籍の改製と言います)。改製があったときは、改製日前の届出は改製前の戸籍に、改製日後の届出は改製後の戸籍に記録されるため、一連の戸籍を請求した場合、同じ役所から2つの戸籍謄本が発行されることとなります。

つまり戸籍は

①生まれたときに親が役所に届け出た記録が載っているもの

②結婚など筆頭者の届出により作られたもの

③本籍地を管轄する役所が変わったためつくられたもの

④役所の都合上作られたもの   

等があり、各役所は受領した届出を、受領したときに管轄している戸籍にのみ詳細に記録しています。

そのため、相続手続き等を行うにあたって、司法書士や金融機関はその方の一生の間の身分関係を確認し、同意を得るべき権利者から同意を得られているかを確認するため、一連の戸籍を確認する必要があるのです。

定年前の確認事項・雇用保険加入期間

定年後、ハローワークで確認したら、加入していた期間が自分の勤めていた期間と違う!サラリーマンにとって恐ろしい事ですが、それは起こりうることです。

第1講 雇用保険の概略

 雇用保険とは失業他労働者の雇用継続が困難になったとき等、必要な給付が受けられる保険です。サラリーマンなら給与明細を見て頂きますと、保険料は毎月の給与から控除され、労使折半で納付されているはずです。

 雇用保険法では「労働者が雇用される事業」を適用事業とし、「個人経営かつ常時使用する労働者が5人未満かつ農林水産業」を暫定任意適用事業としています。つまり農林水産業以外に従事するサラリーマンなら、適用事業に従事していることになります。

 被保険者は昭和55年当時でも「年収52万円以上で反復して就労し、通常の労働者の3/4以上かつ週22時間以上就労している者」を対象としていますので、通常なら正社員=被保険者となるはずです。

 被保険者である期間は算定基礎期間と言い、雇用保険における様々な給付の要件の1つとされています。

 例えば基本手当(いわゆる失業時の給付)の受給期間です。ハローワークでは算定基礎期間に従って所定給付日数を決め、この所定給付日数によって受給期間を与えています。

 所定給付日数が360日である受給資格者なら1年+60日、330日である受給資格者なら1年+30日の基本手当の受給期間を得られますが、それ以外の所定給付日数である場合は基本手当の受給期間は1年となります。

 転職による自己都合退職や定年を迎えられて退職される方は、被保険者期間が10年未満なら90日、10年以上20年未満なら120日、20年以上なら150日の所定給付日数が与えられますので、基本手当の受給期間は一律1年となります。

 問題は会社都合で離職せざるをなかった方です。会社都合で離職した方が45歳以上60歳未満の場合、算定基礎期間が20年以上であれば330日の所定給付日数が与えられますが、10年以上20年未満であった場合、基本手当の所定給付日数は270日となってしまうのです。

 仮に、被保険者期間が本来20年以上だったのに15年となっていた場合、所定給付期間は本来330日であるのに270日となり、基本手当の受給期間は1年+30日が1年となってしまいます。

 万一基本手当を受給することとなったとき、1年+30日と1年の違いは決して小さなものではないでしょう。

第2講 不一致発生時の対策

 では勤めていた期間と算定基礎期間の不一致はどのように発生するのでしょうか?

 事業主は雇用する労働者が被保険者となった月の翌月10日までに公共職業安定所へ労働者の雇用保険被保険者資格取得届を提出しなければなりません。事業主がこの被保険者資格取得届を行わなかった場合、労働者は雇用保険に未加入とされてしまいます。雇用保険料の徴収時効期間は2年ですから、原則2年を超えて遡って雇用保険料を納めることはできません。

 しかし、そのような場合でも「雇用保険の遡及適用の特例」という制度があります。

①事業主が被保険者資格取得の届出を行わなかったことで雇用保険に未加入とされていた者で

②被保険者資格取得の確認があった日の2年前の日より前の時期に、賃金から雇用保険料を控除されていたことが確認された場合、

この場合に2年を超えて遡って雇用保険を適用する制度が「雇用保険の遡及適用の特例」です。

 この制度が適用されると、厚生労働大臣の事業主に対する勧奨が行われ、事業主は納付していない保険料の納付を申し出ることが可能となります。

 但し、この特例を活用するには、本来支払われるべきであった保険料が事業主によって支払われていなかった事が明らかであることが必要となります。つまりお手元にある過去の給与明細を確認して頂き、賃金から雇用保険料を控除されていた期間がハローワークの記録と一致していない事が明らかであれば、本来の支払がなかった事の証明の1つとなります。

 万が一、雇用保険の加入期間の相違が発見された場合は、先ずは過去の給与明細を確認し、ハローワークや都道府県労働局などに相談されることをお勧めします。

介護資金に対する預金保険制度の活用

預金保険制度とは銀行預金の払出が出来なくなった場合等に預金者を保護し、資金決済の確保を図ることで、信用秩序の維持に資することを目的とする制度です。

皆様、元本1,000万円とその利息は保護されることはよくご存じの様で、銀行には1,000万円までしか預けない、と決めて取引行をどんどん増やされる方もいらっしゃいます。

しかし、取引銀行を増やせばその分管理の手間が増えて行きます。ここでは、

  第1講 預金保険制度の保護の範囲

  第2講 介護資金への活用

という形に講を分けて、預金保険制度の活用方法を考えてみたいと思います。

第1講 預金保険制度の保護の範囲

ここで保護される預金の範囲を確認します。

  ●全額保護される預金:決済性預金

  ●合算元本1,000万円とその利息まで保護される預金:一般預金

  ●保護対象外預金:外貨預金、譲渡性預金等

 決済性預金とは「無利息・要求払い・決済サービスを提供できる預金のことです。当座預金や利息の付かない普通預金が該当します。

 定期預金、利息の付く普通預金、通知預金等の一般預金は合算して元本1,000万円までとその利息は保護されますが、元本1,000万円を超える部分の払戻は破綻金融機関の財産の状況に応じる事となります。

 預金保険の対象外預金等は保護の対象外で、支払は専ら破綻金融機関の財産の状況に応じる事となります。

 一般の方は利息の付く普通預金と定期預金しかお持ちにならない事が多いので、1行当りの元本を普通預金と定期預金で合計1,000万円としない限り、預金全額の資産防衛が出来ません。

 しかし普通預金が無利息型であれば、決済用預金として、その普通預金は全額保護対象となります。普通預金を無利息型に替えることで、普通預金残高は全額保護される上、保護元本1,000万円は満額定期預金に充てることが出来ます。

第2講 介護資金への活用

 ご高齢となっても多くの金融機関口座をお持ちになって運用される方もいらっしゃると思いますが、お歳を召して身体がご不自由になっても若い時と同様に多くの銀行口座を管理するという事は中々骨の折れるものです。万一ご本人の意思確認が出来なくなった場合は、金融機関に払出制限をされてしまう可能性もあります。

 このような事態への対策に、事前に介護施設利用料等を自動振替にしておく方法が有効となります。ご本人の意思が確認できなくなると金融機関は払出制限を行いますが、ご本人の意思が確認できる間に締結した自動振替契約は、通常は払出制限の対象とされないからです。

 また、自動振替口座が無利息型の普通預金口座なら、預入先金融機関に万一の事があっても、その普通預金は全額保護の対象となります。

終講 まとめ

 ご高齢となり施設に入られたお父様お母様の施設利用料を、ご本人の普通預金口座から引き落として頂いている方も多い事と思います。引落口座を無利息型とすることで1,000万円の限度額を気にすることなく預け入れ出来ることは、介護費用等、預金管理方法の1つとしてご認識しておいて頂ければと思います。