新社会人の資産形成・いつまでにいくら貯めるべきか

社会人になって自分の将来を考えて資産形成を始める方も多い事と思います。しかし資産形成と言っても具体的な目標がある方は別として、幾らを何時までに貯めるべきかを認識して行われる方は少ないのではないでしょうか?

何事も目標なしに開始して良い結果が生まれる事はそう多くはありません。ここでは先ず社会人となった方が何時までに幾らの資産形成を行っておくべきかを考えてみたいと思います。

一般に資産形成は先ず収入の3か月から1年分程度を確保すべきであると言います。

この根拠は社会保険制度にあります。今あなたがお勤めの会社を退職したとします。あなたは失業等給付、いわゆる失業手当を貰うべくハローワークに行かれることとなるでしょう。

失業手当は離職理由が自己の責任による解雇や自己都合退職の場合、3か月以内の支給停止期間が課せられます。端的に言えば、何か自分でやりたいことを見つけて退職しても3か月間は失業手当が貰えないのです。この期間は自助努力による生活費の確保が必要となります。

従って先ず社会人が目指す確保しておくべき資産は、3か月分の収入、近年の給与水準から考えて、略30万円×3か月=略100万円程度を目安にする必要があると考えられます。

では何時までに確保すべきか。通常、入社して半年、8割出勤を確保すれば年10日間の、入社して1年半、8割出勤を確保していれば年11日間の有給休暇が与えられます。ご自分の進むべき道を確定するには転職紹介サイトが発展している現在でも相応の考える時間は必要かと思います。また、今お勤めの先で、次の仕事に繋げるため習得しておくべき経験等もあるでしょう。自分自身を見つめなおすことに使う有給休暇の期間、社会人として必要な事項をマスターする期間を考えれば、2年から3年程度を積立期間として考えておくことが無理のない所なのではないか、と思います。

具体的には賞与1回で7万円、年間14万円を確保し、月2万円、年間24万円を確保すれば合計年38万円、3年間で114万円確保出来ます。決して無理な数字ではないと思います。

確保する方法は財形貯蓄か、新NISA(積立型)がお勧めです。財形貯蓄は給与支払時に希望金額を会社が差し引いて積み立ててくれますので、積立漏れがありません。

財形貯蓄がないなら、給与振込銀行で新NISA(積立型)を開設しておけば毎月指定日に銀行が引落を行ってくれます。もし会社で確定拠出年金を行っているなら、新NISAの構成商品も確定拠出年金と合わせた資産構成にしておくのも一考です。新NISAは自分が必要な時に一部払出が出来ますが、確定拠出年金はそうは行きません。長い目で動向を観察し、資産構成を都度変更して行く必要があります。

新NISAも同様の構成にしておき、自分の資産運用全体の動向を把握できるようにしておくことは将来の運用方法を考えて行く上で、重要なデータとなります。無論、時間の余裕がある方は、確定拠出年金は積極的に、新NISAは堅実に運用するという方法もありますが、運用間もない期間は極力シンプルに動向を把握できるようにしておく方が余分な気を遣う必要が減るのではないかと思います。

入社3年で100万円が確保できたら、次の目標は400万円です。あなたは26歳位になっているでしょう。結婚費用は結婚には費用が略300万円かかると言われています。何をやるにしても長い人生を考えれば、30歳で400万円程度の資金は確保しておきたい所です。

上記事例に従って仮に3年で114万円を確保でき、それを年3%で運用出来れば複利運用で4年目には128万円になります。

そして、次の4年間は年3%の金利で年間60万円(毎月5万円で賞与時積立なし、ないしは毎月3万円賞与時12万円積立)積み立てられれば同じく複利運用の効果で、4年間の出来上がりは251万円となります。

これで4年間合計379万円。400万円には届かないものの決して悪い数字ではないと思います。

人生には何があるか分からないから、そんなこと考えていられない、という方もいらっしゃると思いますが、何があるか分からないからこそ1つの目安を持って準備して行くことが必要かと思います。

この1つ1つ積み上げて行く、という習慣こそ人生を豊かにする重要な要素なのです。

生命保険の優先順位

人生で一番大きな買い物はマイホームと言われていますが、生命保険もまた人生で2番目に大きな買い物と言われています。月1万円としても社会人となって1年目から始めれば略40年で480万円、途中の更新や保険増額があれば月平均3万円として1,480万円を支払うこととなります。目的に合った保険を選んでおかないと、場合によっては掛捨てとなり無駄な支出となってしまいます。そのため生命保険加入を考えるときは保険の目的を考える必要があるのです。

保険の目的は4つに分類できます。①世帯主に万一があったときの備え、②病気やけがによる入院や手術への備え、③教育資金の準備、④老後資金の準備、です。どの保険商品がそれに該当するか分類すると以下の通りになります。

①世帯主に万一があったときの備え:終身保険、定期保険、収入保障保険

②病気やけがによる入院や手術への備え:医療保険、がん保険、介護保険、所得補償保険

③教育資金の準備:学資保険

④老後資金の準備:個人年金保険

生命保険を選ぶ場合は先ず保険商品毎の目的を確認し、その目的が自分に合っているかを考える必要があります。

一般に保険加入の優先順位は①世帯主の死亡保障、②夫婦の医療保障、③妻の死亡保障、④こども保険・老後の保険、と言われています。

しかしこれは従来型の「成人前の子供がいる夫婦家庭」をモデルとした考え方で、様々なライフプランを持つ方々がいらっしゃる現在の日本に必ずしも合うものとは言えません。

個人的な見解でありますが、以下の考え方をお勧めします。

1.ベースとなる保険を確保する

:①医療保険(+がん保険)、②所得補償保険

独身の方、共働きの方、別居生活の発生、結婚、離婚など、人は様々な人生を送っています。どんな人生を歩む方も、先ずは個人として自分の生活を維持するための医療保険を確保することをお勧めします。独身者は言うに及ばず、家庭を持っても配偶者が身の回りの世話が出来るとは限りません。共働きの場合、幼い子供がいる場合、他に介護者がいる場合もあります。

社会保険でカバーできる部分も大きいので一般的には1日当り1万円程度の入院保障がある医療保険を確保すれば十分かと思います。もし30歳前に加入されるなら保険料も相当安く、払込完了60歳で終身医療保障となる商品もあります。入院する可能性が一生ついて回るリスクであることを考えれば費用の安いうちに終身医療保険に加入しておくことは必須です。ご家族にがんを患った方がいらっしゃれば、保険会社によっては1口からの加入も出来ますので、がん保険も追加しておくことをお勧めします。

又、余裕があれば所得補償保険で長期療養にも対応できる様に備えておくことをお勧めします。

2.ライフステージ別に保険をカスタマイズする

:③終身保険、④定期保険、⑤個人年金保険、⑥介護保険

ベースとなる医療保険(+がん保険)、所得補償保険を確保したら、次はライフステージ別に保険を準備します。

生きている人には医療保険、所得補償保険で十分ですが、残された方のことを考える場合は終身保険や定期保険が必要となります。つまり結婚したとき、子供がまだ独立していないときです。

一番大きな保障が必要となる期間は結婚して子供が出来、独立するまでの期間でしょう。一般的には25年間くらい、30歳で結婚して子供が出来たとすれば55歳までの期間です。

終身保険は一生涯の死亡保障を確保できる保険です。保険料は高めですが解約時には一部返戻されます。

定期保険は5年、10年等一定期間内の死亡保障を確保出来ます。保険料は安いですが掛捨てです。最近は保障年齢を80歳までとする保険が多い様です。

一生涯の保障を確保できると聞くと、多くの方が終身保険で大きな保障額を選びがちです。

一昔前までは終身保険で将来の貯金をしている、と考える方もいらっしゃいましたが、終身保険料は途中で使えるお金ではないこと、万一途中解約した場合の返戻金は相当減額されること等を考えると、大きな金額を終身保険につぎ込むことは資産形成上リスクにもなりかねません。いつでも自由に資金化出来る預金や投資信託として運用した方がいざという時の自由度は高まります。

ライフプランを確認し、子供も独立した後、どの程度の資産形成が出来るかを考えて、80歳以降に死亡したときに残す必要がある金額を終身保険、現在から80歳になるまでの期間は5年又は10年の定期保険で対応し、浮いたお金をNISA等で運用する方が遥かに費用が安く済みます。

子供が生まれたから学資保険、と考える方もいらっしゃいますが、運用効率やいざという時の自由度から考えると、むしろ定期保険とNISAを組み合わせることを考えた方が良いのではないでしょうか。

独身の方の中には介護保険を考える方もいらっしゃいますが、一般的には要介護状態になってからでないと利用できない事も考えておくべきです。要介護というと所謂認知症がある程度発症した状況です。介護保険も保険である以上、申出がないと保険金支払いが開始されない事を考えると、その時誰が自分の代りに申出を行ってくれるのか、考えておかないと死に金となります。子供のいらっしゃらないご夫婦も同様です。

老後のことを考える場合は介護保険より個人年金保険を視野に入れておくことをお勧めします。やはり若い時から加入された方が保険料が安いですし、収入が減って来た頃に年金受給開始までの補填として利用出来れば、将来の不安要素を減少させる効果があります。

以上、保険についての私見を述べさせていただきました。保険についてインターネットやCMで多くの広告が流れていますが、結局は自分の人生は自分一人のものです。保険会社のテンプレートに乗せられることなく、自分の人生の中での各々の保険の役割を考えて契約させることをお勧めします。

為替システム事故の回避

先般、全銀システムのトラブルにより全国的に振込手続きに係る障害が発生したことは周知の通りです。当該システムトラブルでご不便を感じた方も多かった事と思います。

今回で分かったことは、全銀システムは為替データを、各金融機関グループ別に割り振ったコンピュータで事前処理を行った後、ホストコンピュータで最終処理を行っている、という事です。そのうちの1つのコンピュータに不具合が生じたことが今回のトラブルの発端でした。

とするなら、少なくとも同じグループに割り振られていない金融機関の口座を保有していないと、万一の場合は資金移動が一切できなくなる可能性がある、という事です。

現金を払い出し、他行で振り込む、という方法をとられた方もいらっしゃった様ですが、ATMで1日当り払出できる金額は上限があることや、店頭にて振込手続きを行う場合は昨今本人確認が必要となっている事から考えても、相応の時間がかかる事は否めません。

既に報道でご存じの方も多いと思いますが、今回同じコンピュータに振り分けられていた金融機関は以下の通りです。

もし取引金融機関を絞り込んでいる方がいらっしゃいましたら、このグループ以外の金融機関とも取引を行っておくことをお勧めします。

【今回影響を受けた金融機関】

①三菱UFJ銀行、②武蔵野銀行、③三菱UFJ信託銀行、④日本カストディ銀行、

⑤SBI新生銀行、⑥シティバンク エヌ エイ、⑦ジェー ピー モルガン・チェース、

⑧商工中金、⑨りそな銀行、⑩埼玉りそな銀行、⑪関西みらい銀行、⑫山口銀行、

⑬北九州銀行、⑭もみじ銀行

NISA(投資信託)をご検討の方へ・安心できる投資信託を考える

第1講 投資信託の必要性

現在、NISAや個人型確定拠出年金の改正等を通し、運用に対する考え方の転換が求められています。

従来の元本確定型の定期預金では1%未満の金利でしか運用できない一方、最近では石油を始め商品の国際価格上昇が著しく、長期的に見ても定期預金のみでの運用では金利が物価上昇に追い付かず、資産価値は目減りしてしまう可能性さえあります。

また、法律の改正により65歳までの雇用継続が維持されているとはいえ現在の日本では大部分の方が60歳以降は給与の減額にさらされており、65歳以降年金支給開始まで如何に手元資金を増やすか、又は減らさずに暮らしてゆくかが課題である方も多いと思います。

こうした将来への対策としては、運用商品の中に物価変動と共に価格の動く商品(株式・債券・金などのモノ・海外通貨など)を導入することが必要となります。少なくとも物価と近い動きで価格が変動して行くなら、資産価値の目減りはカバー出来うるからです。そのため多くの家庭にとって投資信託は避けては通れない資産運用の方法となっているのです。

「預金以外の方法で運用するのはリスクも高いし難しいのでは?」と考える方もいらっしゃいますが、一獲千金を狙うのではなく、物価のトレンドに沿って資産価値を上げたり、配当を受け取ったりする事はそれほど難しい事ではありません。リスク管理、すなわちリスクの内容や大きささえ認識しておけば良いのです。

リスク管理と言うと、相当面倒なものと思われるようですが、銀行預金でも既に皆さんはリスク管理を行っているのです。

例えばどこかの銀行が金利の良い預金キャンペーンを始めたら必ず利用する方や、定期預金残高を1000万円以下にしている方も多いと思います。また、新聞に銀行についての記事が載っていれば必ず目を通す方も多いと思いますし、記事の内容によっては預け替えを行う方もいらっしゃいます。これこそリスク管理なのです。皆さんはこうしたリスク管理が出来るから比較的安心して銀行預金をしているのではないでしょうか。

預け先が安心できる先であり、良い情報も悪い情報も日々目にすることが出来、取引を自分でコントロールできること、この3点のリスク管理が出来るから安心して預金を預けている事と思います。

すなわち同様のリスク管理が出来れば、投資信託もそれほど恐れるものではないのです。

第2講 こうすれば怖くない投資信託

しかし、それでも投資信託は怖いと感じる方が多いです。

預け先は大手銀行で、月々の動きは詳細なレポートで郵送される、預入も解約も何時でも出来る、それでも投資信託をしり込みする方は多いのです。

それは同じ3点でも銀行預金と投資信託では抑え方が違うからです。

銀行預金を例にとり、見てゆきましょう。

先ず、預け先ですが、銀行が貸付や、国債の売買等で皆様の預金を運用していることはご存じかと思いますし、基本的に回収懸念がある先には貸付を行わない事もご存じかと思います。

つまり預け先がどこで運用しているか、又、運用姿勢も分かっているから安心できるのです。

次に情報管理ですが、仮に某銀行で不正融資があったとします。発覚すればその日のニュースで報道されますし、新聞も継続的に掲載を続けるでしょう。そのような報道があると預金者は預け替えも出来ます。

つまり日常的に預け先の情報がある程度把握でき、判断が出来るから安心できるのです。

最後に取引のコントロールですが、定期預金は基本的に何時でも解約できます。解約した所で元本を割り込むことはありません。預けた分が必ず返ってくるから安心なのです。

何処でどのように運用されているか分からない、分からないからニュースでもチェック出来ない、解約しようにも手数料等が取られて元本割れの可能性がある、これでは安心して預けることは出来ません。

ならば運用先が安心できる先と分かっていて、日々その先の情報が分り、かつ元本割れが発生しにくい組み合わせで投資信託を運用すれば良いのです。

第3講 基本となる投資信託のリスクと管理

一言で投資信託と言っても世の中には星の数ほど商品があり、1つの金融機関でも取扱商品の全てを説明できる方はいないと思います。

しかしNISAや個人型確定拠出年金で扱われている投資信託は、突き詰めれば4種類に分類できます。

①国内株式で構成される投資信託、

②外国株式で構成される投資信託、

③国内債券で構成される投資信託、

④外国債券で構成される投資信託、 の4つです。

この基本の4種類の投資信託が持つリスクを理解すれば、NISAや個人型確定拠出年金で扱う投資信託の基本的なリスク管理が可能となります。

ここで大切なポイントです。リスクとは世間では「危険度」と解釈されていますが、投資の世界では「変動幅」と考えられています。

「変動幅」が大きい程、将来大幅に価格が変化(上昇または下落)する可能性は大きく、「変動幅」が小さい程、将来価格が変化(上昇または下落)する可能性は小さいと推定されます。もともと投資信託は複数の商品を1つにまとめて運用すること、例えば株式なら一定の基準を満たす複数の株式を1つに取りまとめて、個別銘柄の値下りを他の銘柄の値上りでカバーすることを想定しています。つまり投資信託は複数の商品をまとめてリスク(変動幅)管理することで、個別銘柄のリスク(変動幅)管理の省略を可能としているのです。

そのため基本的に管理しておくべきリスクは、

①為替リスク、②公社債の信用リスク、③株式の信用リスク、の3つに絞られます。以下では各リスクの内容と留意点を説明します。

①為替リスク

主に外国株式で構成される投資信託や外国債券で構成される投資信託に関わるリスクです。外国株式や外国債券は、自身の業績や条件に関係なくても為替相場が動くとそれによって価格が変動します。円安(外貨高)になれば価格は上がり、円高(外貨安)になれば下ります。

つまり外国株式や外国債券で構成される投資信託を保有するときは、日銀・米国・ユーロ等の金融政策見通しや、国際情勢の見通しに着目し、円が中長期的にどちらの方向に振れてゆくのか注意しておく必要があるのです。

無論、広い意味では全ての商品がお互いに影響を及ぼし合い、国内株式や国内債券も無関係ではいられません。しかし、外国株式や外国債券で構成される投資信託の場合はその影響を端的にかつ直接に受ける点で特に注意が必要です。

②公社債の信用リスク

公社債の信用リスクはその国に投資したとき、元本が返ってくる可能性、利息が付与される可能性と考えてください。これは発行している国の信用力と、取得できる情報の量と質で図ることが出来ます。

まず国の信用力は、その国が発行している通貨が国際決済通貨として運用されているか否かが1つの目安となります。原則的にドル、ユーロ、円、ポンド等、国際決済通貨として通用している通貨の発行国ほど信用力は高いと言えます。

そして、信頼のおける情報が定期的に広く取得できるか、がもう1つの目安です。

一般的に先進国は貿易収支、国民総生産を始め個人消費支出、自動車販売台数、住宅着工指数等、経済について定期的にデータが公開され、ニュースも報道され易く政治・経済・財政の情報が公開されています。信頼できる情報が公開され、その情報が把握しやすい国ほど信用力は高いと言えます。

新興国の場合、国債の利息は高いのですが、国際決済通貨を発行していない、政治・経済・財政の情報を目にする機会が得にくい等の傾向があります。

目論見書を見ると、大抵は運用先の国名は掲載していても個別投資先までは掲載されていません。そのため国としての信用力や取得できる情報量等から考える方がリスクを把握しやすのです。

③株式の信用リスク

株式の信用リスクは株式投資したとき、今後元本が変動する振幅と考えて下さい。株式の場合、価額が下落することがあるのは当然です。問題は下落後に価額が戻るか否かです。但し投資信託の場合、理論上は個別銘柄の変動リスクを複数銘柄への投資でカバーしていますので、公社債と同様、商品群として信用リスクを把握しておけば、ある程度の範囲で変動幅を制御できる可能性が高くなります。

商品群としての銘柄は、概ね先進国銘柄・主要国銘柄・新興国銘柄の3つに分けられ、信用力は一般的に、「先進国>主要国>新興国」の順に、変動幅は「新興国>主要国>先進国」の順に高くなります。

投資先として具体的な銘柄が分れば良いのですが、商品説明書を見ると大抵は「主要国の株式に投資するマザーファンドへの投資」等の表示がされてます。この内容のよく分からない説明が不安を感じる理由の1つだと思います。

この場合、いくつかのキーワードを押えれば、ある程度リスクを判断できます。主なキーワードは「先進国」「主要国」「新興国」「インデックスファンド」「ベンチマーク」「パッシブ運用」「アクティブ運用」等です。「先進国」「主要国」「新興国」は先に記した通りですのでその他について説明します。

●インデックスファンド:

一定の指標(指数)に連動した運用を目指す投資信託。日経平均を 指標としするなら、日経平均に連動した運用をするため日経平均を構成する代表的な銘柄を組入れた運用が行われます。

●ベンチマーク

投資信託を運用するときに目標となる指標です。上記の例でしたら日経平均がベンチマークとなります。

●パッシブ運用

目標とする指標(ベンチマーク)と連動するように動くことを目指す運用スタイルです。インデックスファンドがその代表です。

●アクティブ運用

ファンドマネージャー等が独自の調査や分析に基づいて運用し、目標とする指標(ベンチマーク)を上回る成果を上げることを目指すスタイルです。

要は、信用リスクについては何をベンチマーク(指標)としているかを確認することが重要です。インデックスファンドなら指標とその動きをチェックしておけば投資信託の動向もつかめます。

また、運用スタイルがアクティブ運用なら必ずしも指標の動きと成果が一致しない事を認識しておくべきです。

無論、毎月の運用レポートで株式構成の変化や価格の動き、運用方針の変更有無等を確認しながら運用する方法もあります。しかし、確認に費やす労力を考えた場合、それに見合う成果が挙げられているか否かの方を考える方がいいと思います。

極端に言えば、相応の管理料を受け取り、その代わりに目安となる収益を上げることを目標に管理を任されているのが投資信託なのですから、手数料を支払う側は管理をある程度割り引いて考えても良いと思います。

第4講 まとめ

投資を開始する前に

①為替リスクがあるか、

②投資先の国の信用リスクは高いか、

③投資株式群の指標は何か、

を確認し、

投資を開始した後は

①為替の動き、

②投資先の国の政治・経済等の動き、

③世界的な景気の動き、

もし運用銘柄等が分るなら④発行体・発行業界の動き等、

を確認しておく。

これだけでも相応のパフォーマンスを確保できる可能性は高くなります。

投資である以上、価格変動は避けることが出来ません。要は自分が価格変動の要因を理解できない先へ投資されている信託を選ばないことが大切なのです。

また、価格変動は避けることは出来ませんが、緩和する方法はあります。ドルコスト平均法と呼ばれているのがその基本的な方法です。

ドルコスト平均法については別稿でお伝えします。

資産運用の基本・投資信託の戦略/ドルコスト平均法の考え方

資産運用を始めようとすると、「リスク」、「リスクヘッジ」等という言葉が頻繁に出てきます。

「リスク」というと、一般に「危険度」という形で捉えられがちです。「リスク」という言葉に引っかかって資産運用は専ら定期預金で、という方も多いのではないでしょうか。

確かに世間ではリスクとは「危険度」と解釈されがちですが、投資の世界では「変動幅」と考えられています。

「変動幅」が大きいほど、将来大幅に価格が変化(上昇または下落)する可能性は大きく、「変動幅」が小さいほど、将来価格が変化(上昇または下落)する可能性も小さいと捉えられています。

変動幅が大きいほど、大きな損失を被る可能性がある一方、大きな収益を得られる可能性もあります。他方、現在の相場がこれから上がるのか下がるのかを正確に予測することは不可能ですし、先が見えない中で今の瞬間のみで判断することは環境が激しく変化する中では危険な事です。

そうなると極端な変動幅のマイナスを避け、かつ変動幅のプラスも享受できる戦略、言い換えれば今の瞬間のみに依存しない戦略、変動幅を味方にする戦略を取る必要があります。その戦略こそ「ドルコスト平均法」なのです。

「ドルコスト平均法」というと何か難しい方法かと思われがちですが、内容は単純です。

毎月、一定の金額を一定の商品に投資する、これだけです。

例えば、毎月一定の日に10,000円を一定の投資信託に投資するとします。1月10日の購入価格が1口2,000円なら5口購入できます。2月10日に1口5,000円になっていたら2口購入出来、3月10日に1口10,000円になっていたら1口購入出来ます。3月末には8口が手元に残り、その時の価格が1口4,000円なら、投資金額30,000円に対し、32,000円の購入商品を保有、つまり2,000円の収益が出ている事になります。

ここでドルコスト平均法をとらないで、30,000円を一度に投資していた場合と比較します。

1月10日に投資していたら15口、2月10日に投資していたら6口、3月10日に投資していたら3口を購入出来ました。

3月末の価格は15口なら60,000円、6口なら24,000円、3口なら12,000円になります。

運よく1月10日に投資していれば30,000円の収益を出せますが、それ以外の場合は投資金額はいずれもマイナスとなってしまいます。このマイナスになる可能性こそ投資信託が怖いと言われる原因です。

そしてこのマイナスとなる可能性は上記の例の通り、一度に投資することが原因です。

すなわち時期を分散して投資していれば防止することが出来たリスクであり、ドルコスト平均法による定額投資、今のみに依拠しない戦略こそ、こうしたリスクの防止戦略として有効なのです。

もう一つの特徴は、最初に投資のスタンスを決めれば、あとは概ね考える必要がない点です。

極端に言えば、毎月一定の商品群に一定額を投資するだけで、あとは何もする必要がない、という戦略がドルコスト平均法なのです。

投資信託を行う方の中には、毎月来るレポートを読み込み、毎日の相場の動きに注目し、相場観を養った上で運用を行う方もいます。が、トレーダーならいざ知らず、一般の方がそれだけの労力を割くことは困難です。本来、この労力を省く商品が投資信託、すなわちお金を信託して運用してもらう商品なのです。投資信託を開始する前に、自分が理解できる先へ投資されている信託を選んでいれば、管理料を払っている以上、そう度々相場の推移を確認する必要は高くない筈です。

もちろん、日々のニュースには注目しておく必要はあります。が、日常のニュースを流し見する程度のチェックで資産運用が出来る、という点で投資信託によるドルコスト平均法は無理なく資産運用するための有効な戦略なのです。

資産運用の基本・なぜドル建てが目立つのか?

新聞やTVを見ると、やたらドルに関わるニュースが目に付くのではないでしょうか?

世の中の通貨はドルだけではありません。銀行窓口にはユーロや豪ドル建ての投資信託がありますし、通貨ではイギリスのポンドもあります。

最近では元による金融商品も出てきています。

でも石油と言えば1バレル〇〇ドルですし、為替相場と言えば1ドル〇〇円なのです。

決済額が多いからでしょうか?

世界で決済される通貨額の4強と言えば、一般的には米ドル、ユーロ、円、英ポンドが挙げられます。近年、元も決済額が増加して来ました。

現在の各通貨による決済シェアは、概ね米ドル40%、ユーロ35%、英ポンド6%、円・元が各3%という所です。

また、基軸通貨という考え方もあります。ちなみに基軸通貨とは国際貿易決済や金融取引時の基準となる通貨です。一般的には米ドルとユーロを指します。

米ドルとユーロが各々決済の約4割を占めているなら、もっとユーロに注目が集まっても良い様にも考えられます。

しかし、日本で基軸通貨と言えばやはり米ドルなのです。

理由としては以下の3つが考えられます。

1つ目は、各国の外貨準備高に占めるドルの割合です。外貨準備高とは輸入代金の決済や対外債務の返済の為、各国政府が保有している外貨です。その合計の割合をみると米ドルが約60%、ユーロが約24%、円が約4%を占めています。日本の外貨準備高においても例外ではありません。

2つ目は、ドルが石油売買において決済通貨として扱われている事です。これはあくまで慣習上の扱いで法的に決められている訳ではありません。しかし、長年の信用力と利便性に基づき現在も国際的な石油売買の決済通貨として扱われています。

最後に、これは特に日本の銀行において言える事ですが、外貨を購入する場合は基本的に一旦米ドルを経由して外貨購入せざるを得ない事です。

例えば銀行で円をスイスフランやカナダドルやクローネに換金するとします。その場合、銀行は預かった円で先ず米ドルを購入し、その米ドルを使って市場からスイスフラン、カナダドル、クローネ等を購入するのです。これは先に記したように金融取引時の基準通貨が米ドルとなること、及び歴史的にも前後日本の主要貿易国がアメリカだった故に、決済の合理性の観点から米ドルを経由する決済システムが構築され、現在に至っていることが要因として考えられます。

つまり日本は輸入決済において米ドルを主力とし、特にエネルギー輸入においては米ドルをベースとし、かつ金融決済においてもドル経由で行っていることから、必然的に新聞やTVでもドルに関わる話が多く取り上げられることとなるのです。

これは資産運用を考える上でも重要なことです。国内で、円預金で運用していても、株式や債券で運用していても米ドルの影響から外れることはないのです。ドル以外の通貨で運用する場合も、少なくとも購入や円転の際は米ドルの影響を受けます。

一般に資産運用を開始するとき、金融機関は皆さんに為替リスクの説明を行います。それを聞いた方の中には為替リスクを避けるべく円預金に全てを預ける方もいらっしゃるかも知れません。しかし運用する以上、米ドルの為替リスクは不可避なのです。

資産運用をなさる方にはその点を踏まえて、今まで以上に新聞やTVなどを通じて米国の情報に着目して頂きたいと思います。

親が作った子供名義の預金を、子供に引き渡すときの注意点

親御さんがお子様名義の口座を作られて、将来の教育資金等の預け入れを行うことは現在でも行われています。

お子様が18歳を迎え、成人となったのを契機に印鑑と通帳を引渡し、以降は自分の預金として管理させることは、重要な教育の一つです。

ただ、ここで注意頂きたいのは通帳等の管理です。

マネーロンダリング等不正取引の防止が求められる今日、本人への通帳及び印鑑の引渡しを怠ると思わぬ手間がかかる事があります。

第1講 本人への引渡しが済んでいない場合

もしお子様が18歳を過ぎているのに通帳、印鑑の引渡しが終わっていない場合は、速やかに引き渡すことをお勧めします。

現代社会はマネーロンダリング、すなわち不正取引に対する目が非常に厳しくなっています。

仮にAさんがBさん名義の口座を保有しており、それを金融機関が知った場合は、Aさんは借名取引、つまり本人以外の人の名前を使って取引をしている疑わしい先とみなされてしまう可能性があります。

マネーロンダリング等の言葉が、まだ世の中に出てきていない頃に口座を作った方は、たかが成人した子供の預金をもっているだけ、とお考えがちです。

しかし、今、世の中で行われている不正取引は、犯罪者が自分以外の名義の口座を使用して行われているのです。親が自分の名前ではない、子供の口座を持っていることは、表面上は、犯罪者が行っている行為と違いはありません。

もし、親が子供名義の預金通帳を持って、金融機関の窓口で「この口座は本当は自分の口座だ」と言って払出を行おうとしたなら、金融機関は立場上、第三者名義預金を保有し、払戻に来た人物(マネーロンダリングの疑いあり)として扱う事となります。

また、仮に不幸にも親が通帳や印鑑を保有したまま亡くなったとしたら、子供名義の口座は、税務署も亡くなった親の財産として相続税の対象とみなす可能性があります。

子のために積み立てた預金である以上は、子が成人した場合、速やかに通帳と印鑑を引渡し、子自身が金融機関に連絡し届出をしている筆跡を変更しておく必要があるのです。

第2講 引き渡しが終わり、喪失しているものもないとき

成人後、本人に管理を任せ、通帳や印鑑が本人の手元にあるなら問題はありません。

通常は本人が印鑑と通帳を本人確認書類と共に金融機関に持参すれば、本人確認書類で本人であることが認識され、通帳持参によって金融機関の預金管理データが本人が預けているという事実が一致し、印鑑によって本人が管理している事が確認されます。窓口に持参したときは今後の取引に支障が出ないように、金融機関に登録してある筆跡を親のものから自身のものに替えておくことを忘れないようにして下さい。

第3講 引き渡しが終わっているが、喪失しているものがあるとき

問題は印鑑や通帳が手元にない場合です。

本人に管理が移り、届出の筆跡が本人のものと変更された後なら良いのですが、通帳や印鑑がなく、筆跡も親のままの場合は、名義人の本人確認だけでは済みません。

具体的には、当初の筆跡が本人のものでないとの理由で、当初お届を頂いた方(親)から、「この預金は子に引渡し済みであること」を称する書類の提出を求められる可能性があります。

終講 まとめ

万一、当初の預金作成者である親が既に亡くなっている場合や、認知症になっている場合、手続きは更に複雑になります。

具体的には、親が亡くなっている場合は相続手続きが求められますし、認知症になっている場合も相続手続きに準じた手続きが求められます。

子のために子供名義で作った預金がありましたら、成人後は速やかに本人の管理に移し、届出の署名を差し替える事をお勧めします。なお、その際は印鑑、通帳等の保管にくれぐれもご留意ください。

確定拠出年金・意外と知らないマッチング拠出とライフプラン拠出の違い

最近、確定拠出年金制度が改正され、企業型確定拠出年金を行っている方も、個人型確定拠出年金を行う事が出来るようになりました。しかし、ここで突き当たる壁がマッチング拠出です。

マッチング拠出がされている場合、企業型確定拠出年金と個人型確定拠出年金は一緒に積み立てることはできません。

他方、企業型確定拠出年金を行っている企業の中にはライフプラン拠出という方法をとっている企業もあります。ライフプラン拠出がされている場合は企業型確定拠出年金を積み立てている間でも個人型確定拠出年金の開設が出来ます。

同じ拠出金なのに何故このような違いがあるのでしょうか?

この違いはマッチング拠出は従業員拠出、ライフプラン拠出は企業拠出であることによります。既に従業員が拠出しているマッチング拠出の場合は、、個人の拠出を二重に出来ないという点で、個人型確定拠出年金を開設出来ないのです。

一見、共に拠出金控除後の金額が給与として支払われますので同じ様に見えますが、意外な相違点があります。それは額面給与への影響と社会保険料への影響です。

マッチング拠出=従業員拠出の場合は、先ず額面通りの給与を受け取った後に、従業員の給与から確定拠出が行われます。給与からの支払が前提ですので従業員の受け取る額面給与は拠出を行っても影響はありません。社会保険料は額面給与に基づいて計算されるので積み立てをしても、しなくても、負担する社会保険料は変わらないことになります。

ライフプラン拠出=企業拠出の場合は、事前に給与の中にライフプラン給付金という枠を設け、給与として支給できるものの、もし従業員が希望すれば、ライフプラン給付金を上限に、従業員が希望した金額を拠出金として差し引き、拠出金を控除した金額を給与として支払うという制度です。拠出する分、額面給与が減るため、拠出額が大きくなればその分社会保険料は減少します。

負担する社会保険料が減れば、その分手取りは増える事となりますが、社会保険料は将来の厚生年金の計算基礎となります。計算基礎が減れば、将来の厚生年金は少なくなる可能性があります。

なお、税金への影響ですが、従業員拠出の場合、拠出金は小規模企業共済掛金控除として年末調整時に所得金額から控除してもらう事が必要です。

企業拠出の場合、拠出金は企業が福利厚生費として処理しますので、年末調整時の手続きは必要ありません。

いずれの場合も所得から控除されますので、両者の違いは少ないと言えます。

給与金額にもよりますので一概には言えませんが、理論上はライフプラン拠出の場合、ライフプラン給付金を確定拠出に回す分、額面給与は減り、厚生年金の計算基礎を減らすことになるので、確定拠出年金は増えるが厚生年金は減る可能性が出てきます。

この場合、ライフプラン給付金を給与として貰い、個人型確定拠出年金を別途開設し、給与の中から個人型確定拠出年金を積み立てることで厚生年金が減少する可能性を削減することもできます(但し、個人型確定拠出年金の場合、年間の管理手数料等が別途発生しますし、企業型と併用する場合は個人型の積立限度額が小さくなる等、運用損益や運用条件を踏まえて考える必要があります)。

昨今、社会保険制度は日々時代に合った制度へと改善されています。ご自身の勤務条件等をご確認頂き、或いはFP等にご相談頂き、ライフプランに合った積み立てを選ばれることをお勧めします。