一般的に準確定申告は死亡者が自営業者だった、年間2千万円以上の給与所得があった、公的年金が年間400万円以上あった人などが対象となります。
この情報を知って、「私たちには関係ないもの」と考える方も多いと思います。しかし、準確定申告をする、しないに関わらず、被相続人にかかった医療費を見直してみることは必要かと思います。
年金の源泉徴収票をご覧になると分かりますが、一般的に年金は所得税等が控除されて支払われています。ご高齢でご病気などがある方は、医療費控除の確定申告をして源泉徴収された税金から還付を受けられる方もいらっしゃると思います。
準確定申告というのは毎年2月から3月にかけて行っている確定申告を被相続人の死亡後4か月以内に行う手続きなのです。つまり被相続人が支払った医療費のうち、亡くなった年の1月以降に被相続人が支払った医療費は準確定申告の医療費控除の対象になるのです。現代社会において、大抵の人は亡くなる時に病院でなくなります。亡くなるまでの医療費の内、被相続人名義で支払っている医療費は準確定申告における医療費控除の対象になるのです。
仮に配偶者が被相続人の医療費を支払っていたなら、その医療費は、被相続人の未払医療費を相続人である配偶者が支払ったものとして、相続税法上、配偶者の債務控除の対象になります。相続人である子が支払っていても同様です。
但し気を付けて頂きたいのは、被相続人が、子の扶養者になっている場合、つまり被相続人の生前、被相続人の医療費を子が医療費控除の対象として申告していた場合です。その場合、子が支払った被相続人の医療費は例年通り、子の確定申告において医療費控除の対象として申告する必要があります。
相続人でもない、全くの他人が、被相続人の医療費を支払っていた場合は、相続人に対して弁済を請求することになり、赤の他人の税法上の控除などは行われませんが、その様なケースは現代社会においてまず発生しないでしょう。
つまり、被相続人の医療費一つについても何らかの税務上の処理が発生する場合があるのです。相続に当たっては、銀行預金などの正の相続財産のみならず、負の相続財産(債務控除)についても考えておく必要があります。場合によっては準確定申告の対象となり、還付が受けられるものもありますから。なお準確定申告の還付金は、相続財産に当たりますのでそのあたりも気を付けて下さい。